Clap Novel
□聖夜物語
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V.サンタの魔法の袋
12月某日。
「終わったぁぁぁ!!!終わったぞルカぁぁぁ!!!」
新人サンタ、神威がくぽの家に彼の・・・明るい声が響く。
「ご主人・・・まだ後・・・半分はありますよ?」
「え?後半分だろ?この量を・・・この量を半分も終わらせたんだ。喜ばないと!!なぁルカ、一緒に頑張ってくれてありがとな。お祝い・・・お祝いしよう。夕飯何食べたい?」
プレゼントの袋詰めを始めて半月。
ようやく半分の量のプレゼントを袋に詰め終え、がくぽは嬉しさのためか1人舞い上がっていたのだ。
「はぁ・・・ご主人の作る物ならなんだっていいですよ。それより・・・少し落ち着いたらどうです?お茶・・・入れますよ」
対し、パートナーであるルカは冷静だった。
表情はあまり変わっていないようだったが、穏やかな声で彼女は言う。
「ルカは相変わらず真面目だなぁ・・・」
がくぽはそう言って微笑む。
これを肯定ととったのか、ルカは立ち上がるとお茶の準備をし始めた。
「ああそうそう。ルカはさ、一応・・・配達に行ったことはあるんだよな?」
テーブルの上に紅茶と甘いお菓子の香りが広がる。
一口紅茶を飲み、そうがくぽはルカに尋ねた。
「ありますが・・・何か聞きたい事でも?」
彼女は言う。
「ん?うん。僕さ、この町から出たことないんだよ。だから・・・外の世界はどんななんだろうって・・・思って」
「そう・・・ですね・・・私が行ったのは温かい国でした。海が広がって、月がとても綺麗で・・・ついてこれてますか?」
ひとしきり説明をしたところで、ルカはがくぽを見た。
「ごめん・・・海って・・・何?月?電気の種類か何かかな?それ」
彼の言葉に、彼女はやっぱりというように息をはく。
「見たことが無いなら・・・想像するのは難しいですね。説明するのもアレですし・・・配達の合間に説明します」
「あ・・・ありがとう・・・ん?配達?ルカ・・・がソリを引っ張るんだよな?」
「そうですが」
がくぽは顔を上げる。
「え?ルカ・・・が?」
「はい」
相変わらず淡々と、ルカは言った。
「聖なる夜ですから、不思議な事が1つや2つ起こってもおかしくはないはずです。びっくりするとは思いますが」
「え、それって・・・」
彼女は答えず、一口紅茶を飲む。
「ああ・・・それから1つ聞いておきます。配達の途中ご主人の前に・・・小さな子供がいたとしたら・・・どうしますか」
「・・・え?」
ルカからの突然の問いに、がくぽは目を見開く。
「因みに・・・その子供のプレゼントは無い・・・と思って下さい。世界には・・・そういった子供もいるんです。そんな時「前のサンタは・・・どうしてたの?」
彼女の言葉をさえぎって彼は言った。
「・・・私がそう聞く理由が・・・わかりませんか?」
ルカは言う。
がくぽは小さくため息をつくと、おもむろに側にあった袋を取り出した。
「てかさぁ・・・そのサンタの顔見てみたいよ。僕達の持ってる・・・力の意味がないじゃないか」
「力・・・?」
彼は頷き、袋の中に手を入れる。
「僕達がプレゼントを詰めてるこの袋・・・ただの袋じゃないんだよ。子供達が喜ぶ・・・一番望む、最高のプレゼントを出せるんだ。だから、プレゼントを貰えない子供なんて、1人もいないんだよ」
がくぽはそう言って、袋から手を出した。
「・・・で。これは僕からのプレゼント。こうやって・・・僕の意思でプレゼントを出すことも出来るんだ。はい、一緒に頑張ってくれたルカに」
ルカの目が見開く。
彼が手に持っていたのは、可愛らしいフワフワのポンポンのついた髪飾り。
「え・・・・」
「つけられないなら、僕がつけてあげるけど・・・」
がくぽは言い、ルカにその髪飾りをつけた。
「良かった。似合う似合う」
笑顔で彼はそう続ける。
「ご主人・・・こういった時、私はどうすればいいのでしょうか」
普段表情を変えないルカが、頬を紅く染めてがくぽに尋ねた。
「ん?うん、そうだなぁ・・・ありがとう って、一言言ってくれると 嬉しい」
そんな彼女に、微笑みながら彼は言う。
「あ・・・ありが・・・とうございます・・・」
「・・・ん。どういたしまして」
そろそろお茶も終わりの時間。
クリスマスまで、後数週間という ある日のお話。
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