リクエスト小説

□想い、次元を越えて
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とある日の早朝。

珍しく早い時間に目が覚めたルカは、何となくという理由で居間へと向かっていた。

朝の廊下は冷え込む。

早く暖かい居間に入りたくて、彼女は足を早めた。

しかし、それは居間のドアの前で止まってしまう。

何故なら、中から2人の男女の楽しそうな声が聞こえてきたからだ。

声の主は、どうやらマスターとミクのようである。

「マスター、今日の仕事は何時までですか?」

『うん?今日は・・・4時頃に終われるかな。ミクはどうなの?』

「私は夕方まで、合唱団のお仕事ですー!!!」

『そっか。頑張って来いよ』

「マスターも、頑張って下さいね!!」

顔が見えなくとも、微笑ましい雰囲気が感じられる2人の会話。

一体、何時からああして話をしているのだろう。

ルカは思った。

そういえば、マスターは有名な音楽会社で仕事をしていると聞いた事がある。

毎日忙しく、自分達の世界に顔を見せる事は多い方ではないだろう。

そんなマスターが唯一安らげる時間は、朝位しかないのかもしれない。

考えを巡らすルカを余所に、2人の会話は進んでいく。

「・・・そういえばマスター、この前の譜読み もうバッチリですよ!!」

『本当か!!じゃあ・・・2日後、仕事がオフだから 収録しようか』

「・・・・はい!!!頑張ります!!!」

ミクの嬉しそうな声は廊下にまで響いてきた。

彼女は毎日、こうしてマスターと話をするために早起きをしているのだ。

ルカはドアをじっと見つめる。

ミクがマスターを好いているという事は、一家の全員が知っていた。

そして、この恋が中々難しいものである という事も・・・

それでも、彼女は真っ直ぐに言うのだ。

"マスターが好き"と・・・

ミクにとってマスターとのこの時間はとても大切なものであり、2人きりの収録もデートをしているような気分なのだろう。

彼女なりに現実を受け入れた上で、前向きにそれを楽しみながら日々を過ごしている。

そんな考えが出来るミクの事を、少なからずルカは羨ましいと思っていた。

「そろそろ皆が起きてくる時間ですね。私、ちょっと着替えてきますね!!」

『はいはい。行ってらっしゃい』

「はぁい!!ちょっと待ってて下さいね〜!!」

そんなミクの声がし、彼女の足音が近づいてくる。

ルカは慌てて廊下の影に姿を隠した。

ミクは彼女に気づいていないようで、鼻歌を歌いながら階段を登っていく。

ルカはほっとし、自分も部屋に行こうと踵を返した。

『ちょっと待った、ルカ』

しかし、彼女の足は目の前に現れたマスターによって止められてしまう。

「まっ・・・マスター!!!あの・・・ごめんなさい私、話を聞くつもりは・・・『え?ああ』

ルカの必死な謝罪にマスターは笑った。

『気にしなくていいよ。いつもの事だし』

「でも・・・・」

『大丈夫、ミクもこれ位の事じゃ怒らないから』

そして、少しの間を置いて呟くようにマスターが言った。











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