リクエスト小説

□君とのキョリ
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*レン君視点です。




その日はたまたま同じ仕事場で、たまたま休憩時間が重なっていた。

彼女の仕事をする姿を見るのはこれが初めてだ。

沢山のボーカロイドに囲まれて、楽しそうに笑っている彼女を見ていると、なんだか面白くないような・・・そんな、不思議な気持ちに襲われた。















君とのキョリ
















「レン君、お疲れ様です」

「あ、グミ。お疲れ」

話が一段落したのだろうか。

彼女・・・グミが俺を見つけて駆け寄ってくる。

ミク姉よりも濃い緑色の髪が揺れて、髪よりももっと綺麗な緑をした瞳が細められた。

俺と同じ瞳の色。

なのに・・・彼女の瞳は俺なんかよりとても綺麗で。

「あの・・・・レン君?」

「・・・え・・・あっ・・・ごめん」

何だか、吸い込まれてしまいそうだ。

「レン君は、これから収録なのですか?」

「あ・・・うん。グミは・・・もう終わったの?」

上手く口がまわらない俺。

がく兄やカイト兄を見てるっていうのに、どうやっても上手に話せない。

多分、この辺は全部リンに持ってかれたな。

って・・・リンのせいにしちゃあダメか。

アイツだって・・・頑張ってるから。

「いえ。終わりかと思ったんですけど・・・少し、調整が必要だそうなのです。ですから・・・暫く休憩をいただいたのですよ」

「・・・・そっか・・・・」

沈黙。

こんな風にしか返事を返せない俺を彼女はどう思っているのだろう。

何だか・・・情けない。

「レン君は・・・どんな歌を歌われるのですか?」

「・・・・・・え?」

「レン君とご一緒した事ないですし・・・お家でも、歌声を余り聞かないので・・・」

そっか。

俺は思う。

がく兄やメイコ姉なんかしょっちゅう歌ってるもんな。

「・・・俺がもらった歌は・・・何だか、俺自身を歌ったみたいなんだ」

「・・・レン君自身を?」

口ベタで、考えてる事もよくわかんなくて、素直になれなくて、なのに、一人前だと言われたくて。

あの日、がくぽさんに言われたあの日から、俺は何か変わったのだろうか?

「・・・・・そうで・・・しょうか」

「・・・・・え?」

「私には・・・そうは思えません」

「・・・レン君は・・・立派ですよ」

彼女は笑顔で言った。

「自分のいいところは・・・自分じゃ見つけるのが難しいのですよ。ですから・・・教えてあげるのです」

「・・・教・・・える?」

「はい。レン君は立派です。私は・・・レン君を尊敬しているのですよ?」

その言葉に、俺の目が大きく見開く。

こんな俺を・・・尊敬してる?

そんな事言われると、何だか・・・

「・・・恥ずかしい、じゃんか・・・」

今の俺の顔はきっと真っ赤だ。

「・・・・レン君?」

「・・・グミのそういうところが・・・うらやましい」

「・・・・・え?」

「・・・・っ・・・・何でもない!!俺、今から収録だから・・・じゃ、じゃあなグミ!!!!」

胸の奥がくすぐったい。

言うだけ言って、俺は収録室に駆け出していた。

自分の気持ちはわかっているつもりだけど、彼女・・・グミはどう思ってるのかな。

誰にでも優しくていつだって敬語なヘンなヤツ。

いつかちゃんと、彼女と話ができる日が来ますように。

誰もいない収録室。

俺の小さなため息だけが部屋に響きわたった。














君とのキョリ








(交わるまでは、まだまだ遠い)








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