Clap Novel
□7月拍手まとめ
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*がくぽ誕生日編
「・・・可愛い絵ですね。これは、お盆によく見る・・・?」
「・・・はい。彼・・・好きなんです、茄子」
「へぇ・・・きっと、凄く喜んでくれますよ」
――紫色の貴方へ:2年目の誕生日
その日の夜は、とてもとても賑やかだった。
7月31日、神威がくぽの誕生日。
恒例行事である誕生日パーティを終えたがくぽは、これまた去年と同じ、年少組からのプレゼント・・・沢山の茄子で造られた牛を抱え、自室へと向かっていた。
「・・・・・・・あ」
「・・・へ・・・ルカさん?」
部屋に着き、ドアを開けた途端にがくぽの目が大きく見開かれる。
間違いなくここは自分の部屋の筈なのに、そこで自分を待っていたのは・・・ルカ。
さっき、自分の部屋に帰るとか言ってたじゃないか。
「・・・・何?」
「いやあの・・・何で俺の部屋にいるのかなー・・・て思って・・・や、別にいてもいいんだけ「ん」
がくぽはしどろもどろになりながら言うが、その言葉は彼女にさえぎられてしまう。
「・・・・・ん?」
「・・・コレ。大した物じゃ、ないけど・・・」
そんな言葉と共に、差し出されたのは綺麗に包装された小さな箱だった。
「えーと、あの・・・俺に・・・だよな?」
「・・・他に誰がいるっていうのよ」
「・・・開けてもいい?」
「・・・・・・・」
無言は肯定と取らせてもらおう。
がくぽは心の中でそう呟き、ガサゴソと包装を解いていく。
「・・・コレ・・・」
中から出てきた物に、彼の目が大きく見開かれた。
「この前、部屋の片付けした時に割れちゃったって言ってたでしょ?だから、その・・・」
頬を真っ赤に染めて、そうルカは言う。
彼女からの誕生日プレゼント。
それは、可愛らしい絵の(例によって、これも茄子の牛だ)描いてある、ガラスで造られた風鈴だった。
この絵は、おそらくルカが描いたものなのだろう。
「・・・可愛い」
「・・・風鈴の外身と短冊部分に絵を描かせてくれたの。音は・・・前の風鈴より、ちょっと高めだけど・・・」
彼女はそう言うが、風を受けて小さく鳴った風鈴の音は、美しい音色となって部屋に響き渡った。
「・・・いや、これ位が丁度いいよ」
がくぽは言うと、窓にその風鈴を付けてくれる。
チリン、チリンと鳴り響く風鈴の音。
暫くして、風に靡く短冊を見た彼がこう尋ねた。
「・・・短冊には、皆の顔を描いたの?」
「・・・特に描くものがなかったから」
「がくぽ愛してる!!!があるじゃん」
「誰がそんな事書くか恥ずかしい!!!!」
その音を聞きながら、交わされたのはそんなやりとり。
「・・・・・ルカ」
少しの間を置いてがくぽに名前を呼ばれたルカは、彼の方を向いた。
「・・・・・ルカ」
一瞬ためらった後、そっと近づいてきてくれる彼女の腕を彼は優しく引き寄せる。
「・・・・・くるしい」
続いて、聞こえてきたのはルカのくぐもった声。
「・・・気のせいだよ。ありがとな、凄く・・・嬉しい」
構わずに、がくぽは彼女を抱きしめたまま耳元でそう囁いた。
彼女が小さく頷いてくれるのがわかる。
「・・・・がくぽ」
「・・・うん?」
「誕生日・・・おめでとう」
そんな言葉と共に自分の腰に温かさを感じ、彼の顔に笑みが浮かんだ。
「・・・ルカさんルカさん。まだ誕生日は終わってないし・・・あと少しだけ・・・素直になってくれないかな」
時計を見ると、まだ日付けは変わっていない。
ならば、あともう少しだけ、彼女には我が儘を聞いてもらおう。
「は・・・?な、何する気なっ・・・んんっ・・・んぅ・・・っ・・・」
ルカが抗議の言葉をあげるより先に、がくぽは彼女の唇を塞ぐ。
そんな2人の後ろ、美しい風鈴の音が小さく鳴り響いた。
(それは、愛を紡ぐ始まりのオト)
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