ジパング〜神々の島〜

□第1話:漂流者
1ページ/1ページ


『それ』を一番はじめに見つけたのは、チョッパーだった。

「…なんだ、あれ」
「どうしたの?」
傍らに来たナミに、チョッパーは船首の斜め前方を指差して見せた。
「あそこ。何か浮いてるぞ」

目を凝らして見ると、それは一艘のボートのようだった。
ナミは急いで双眼鏡を持ってくると、そのボートに焦点を当てた。その頃には、昼寝をしているゾロを除いた全員が、ふたりの様子に気が付いて、船首に集まってきていた。

「次の島が見えるのか?」

ルフィの問いには答えず、ナミは無言のまま双眼鏡のごしの景色に目をこらした。
波間に漂うにして浮いているのは、やはりボートだった。帆柱もなければ舵もない、小さな手漕ぎのボートが、大海原の只中に、ぷかぷかと浮いている。

さらに凝視して、ナミはボートの中の人影に気が付いた。

「航海士さん?」
と、ロビンがナミの肩に手をかけた。「何が見えるの?」
「小さなボート。人が乗っているわ…というより、倒れているみたい」
「本当か!?」
と、チョッパーがぎょっとしたように、彼方のボートに目を向けた。

「おっし!!」
誰に言われるでもなく、ルフィがボートに向かって思い切り腕を伸ばした。

程なくして戻ってきたルフィが小脇に抱えていたのは、見慣れない黒装束に身を包んだ小柄な少年――いや、恐らくは、少年だった。

無造作に首の後ろでひとつに束ねられた長い髪は、服と同じ黒い色をしている。
ルフィに下ろされたまま、身じろぎひとつせず甲板に横たわる少年に、チョッパーが屈み込んだ。

「…し、死んでんのか?」
ウソップの問いに、チョッパーが首をぶんぶんと横に振った。
「生きてる。ていうか…」

「んあー…」
少年の口から、声が漏れた。
うめき声、と、いうにはいささか間延びした呑気な声だ。

チョッパーがぽりぽりと頭をかいた。
「ていうか、寝てるだけだぞ」

少年の瞳が、ふっと開いた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ