ジパング〜神々の島〜

□第3話:少年(上)
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案の定溺れていた少年は、チョッパーの手によってすぐに息を吹き返した(人工呼吸の有無については、読者の想像にお任せいたします)。

全身ずぶぬれになり、歯の根も合わないほど震えている少年だったが、あっぱれというべきか、いまだ警戒心は健在だった。
けれども今度ばかりは、身構える前に取り押さえられた。少年が体力を消耗してしまっている今、取り押さえるのは造作ないことだった。

「放せ!!」
「別に取って喰いやしないから、少しは落ち着きなさいよ」
言い聞かせるようにナミが言ったが、それで少年が安堵する様子はかけらもなかった。

なおも暴れようとする少年をルフィが羽交い絞めにするようにして、台所の火の側に引きずって行く。
その間にも、少年はどうにかして逃れようと、もがき続けていた。

「…誰か、おれにタオルを…」
一番の功労者であるウソップのつぶやきは、風に乗って儚く散っていった。



押さえつけられるように火の前に座らされたところで、少年はようやくおとなしくなった――というより、暴れる元気が尽きてしまったらしかった。
それでもルフィ達に気を許す気はさらさらないらしく、差し出されたタオルにもそっぽを向く始末だった。
もっとも、その結果、ナミのお世辞にもやさしいとはいえない手つきでがしがしと体を拭かれ、明らかに後悔している顔になっていたが。

これほどかたくなに拒絶されてもなお、ルフィ達が少年を放っておくことができなかったわけ。
それは、彼らがこの少年を何となく気に入ってしまったからだった。
それに、大人びた表情をしているとはいえ、まだ幼い顔つきといい、華奢な体つきといい、このまま捨て置くには、この少年はあまりに頼りない風情だった。
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