好きで好きでたまらなくて、あいつを思うだけで胸が苦しくなる。
何も手につかない。これが恋わずらいってやつか。
授業中なのに、手は全然動いていない。

「圭一くん、お話ちゃんと聞いてたのかな?かな?」

ぼーっとしている俺に、しゃべりっぱなしのレナは聞いてきて、
ぐっと顔を近づけた。あーもう、それだけで顔を赤くするなよ俺のアホ!
ちょっとドギマギしながら、返事をした。

「すまん、聞いてなかった……」
「もーっ、ちゃんと人の話は聞かなきゃだめだよ?」
「……はい……で、何?」
「うん、今日ね、レナと魅ぃちゃん用事があるから、圭一くんには先に帰っててほしいの」
「あぁ、そういう話か……っていう事は部活もなしか?」
「うん、ごめんね?」
「いいよ、それだけで謝るなって」

なんだ、今日はレナと帰れないのか。胸がズキンと痛む。
馬鹿みたいだけど、それはそれは俺にとっては相当ショックな訳で。
魅音と話すレナを見ると、なんだか切ない気持ちでいっぱいになった。




最初はからかうのが楽しかった。それはレナの焦った顔や、
赤くなったり嬉しがったりするのを見たかったから。
それがだんだんエスカレートしてって、今じゃもうあいつの
そういう顔……っていうかどんな顔でも見ていたいという気持ちが高まりすぎている。
しかもレナを見ているのは俺だけがいいっていう変な独占欲もあって。
この気持ちを言えたらどんなにいいだろう。あぁ、言ってしかもレナも
同じ想いだったら……嬉いどころの話じゃないな。

「…………?」

俺は今一人寂しく帰っている途中で、前方に想っている相手を見つけた。
そう、レナだ。魅音もいるな……。……?なんだ、あの男達。
レナの肩を変な男達が気安く触っている。見た目はチャラチャラしている
奴らで、あきらかにレナは嫌がっている。魅音も何も言えずじまいだ。

「ちょ、なんだあれ……?」

ナンパか?それはすっごい許せない事だ!今から俺がぶっとばしに……!
と思ったが、そうじゃないらしい。あ、一人の男がレナの手を握って、
車の中に……。魅音は違うヤツに腕を押さえられてる……。

……………!!??

「な、何やってるんだお前ら?!」

俺は走ってレナ達の所に走った。誘拐かなんかか?!
やめろ、やめろやめろやめろ……!触るな、触るな!

「あん?誰だにーちゃん?」
「け、圭一くん!?」「圭ちゃん?!」
「レナと魅音を離せ……ッ!」

ぼこっと一人を殴ってみせた。殴った拳が痛い。

「け、圭一くん……?!」

レナの悲鳴に近い声が聞こえた。あー、もう!レナに何やったんだよ!?
許すか、この、この……!

「て、てめぇ、何やってんだよ!」

頬をおもいっきり殴られた。今度は腹を、何度も何度も。
くそっ反則だこんなの。一人でかかってこいってんだ……!
口から血みたいのが出た。不思議と殴られても痛くなくなってきた。
殴られすぎて麻痺したのか?そうか、そりゃあいいや。
でも立ち上がれないや。あー、かっこ悪いな俺。

「はっ!今回はこれだけにしといてやるよ、糞餓鬼が!!」

そんな捨て台詞を残して、男達は車に乗ってどっかへ行ってしまった。
それと同時に、俺の意識が途切れた。










「……け……く……けい……ん!」

誰かが、俺を呼んでいる―――?

俺はいきなり深い眠りから覚めた。でもまだ目が開けられない。
じょじょに明るくなっていって、時間をかけながら、
目を開ける事ができた。それと同時に腹に激痛が走る。

「…………ッ!」
「あ!だめだよ圭一くん!まだ寝てなきゃ!」
「レ、レナ……」
「びっくりしちゃった。いきなり圭一くんが来て、あの人達殴ったんだもん」
「……!そ、そうだ、レナ達はあいつらに何されたんだ?!車に乗せられてたじゃないか!」
「……えっと、なんかよく分からない事言われて、その……何かされそうになってたんだ、あははは」
「何かって……」

聞くまでもない、そういう何か、なんだ。詳しい事はよく分からないが、
相当危ないところだったらしい。その危ない時にちょうど
俺が通りかかったって訳だ。なんだろう、このもやもやとした感じは。
レナと魅音を俺は助けられたのか?……そうなのか?

「……魅音は?」
「先に帰ったよ。後はレナに任せるって言われちゃった」
「そっか……。なんか寒いな……」

他に何か言いたい事がいっぱいあったが、俺は違う言葉で逃げてしまった。
レナはきょとんとしている。それからあははっと笑った。
もう9月後半だもんねーと言いながら。あぁ、なんでこんなに……。
俺ってばなんかすっげー情けない男みたいに思える。

「……ッ!」
「圭一くん、ありがとう」
「レ、レナ……?」
「うん?」

いや、うん?じゃなくて。何で俺の額に自分の額をくっつけてるんだ?
なんか、熱あるの?っていう時にくっつけるような、そんな感じ。

「最近圭一くん元気なかったから、熱でもあるのかなって」
「な、ないぞ!全然!」
「そう?だって今も寒いって……」
「ああああ!そ、それは、その……って痛ッ!」
「あーもう!だからまだ寝てて!」

そして俺はまたぱたっと死んだように倒れる。そういえばここ、外じゃないな。
多分、レナの家だ。いや絶対そうだ。はて?誰が運んだんだろうか……。

「ねぇ圭一くん」
「何?」
「さっきのお礼に、何か一つだけお願い事叶えてあげる」
「……な、何だそれ?」
「えへへ、よく少女漫画にあるんだ。助けてもらったお礼に……って」
「何でもいいのか?」
「え、えっと、変態のは嫌だよ……?」
「えー」
「えーって、そんな……はぅ」
「冗談だよ。じゃあな、うーん」

こういうのは本当に贅沢な事を言えばいいんだろうが、
俺は何も考えずにこう言った。実に学生らしい、甘酢っぱいもの。

「手、握ってくれないか……?」








それから日が沈む、ほんの何十分間。レナを手を握ってくれていた。
いや、握ったじゃないな。俺も握ってたから、繋いでいた、が正しい。
レナの手は本当温かくて、それが俺の温度をあげていた。
もっと触れたい、でも、今はこれだけで十分。そんな矛盾していた
気持ちを抱えながら、幸福な時間を過ごしたのだった。

今もまだ、手が熱い―――。





あとがき

最初に懺悔。自分で書いてて意味分からないorzしかも無駄に長いよ!
恥ずかしい作品ですが、とりあえずヒロイン助けるヒーロー書きたかったんです(うわ!)

(20060829)






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