「あ、雪や!」

12月になるともう本格的に冬になり、吐く息は当然のごとく真っ白。
なんとなく窓を見た蜜柑は初めてソレが分かった。
(あれ?天気予報で雪降るなんて行ってたっけ?)
高等部にあがった蜜柑達は、全員がトリプルになり、
寮にテレビをつけるのが許可されている。
とある事件もなくなり、ここのところ平和で教師達も気が抜けたらしく
ひいきなどもない。最近では学園の外を自由に出れるようになった(門限はあるが)。
(雪かぁ〜、セントラルタウンか渋谷にでも行こうかなぁ……)
雪のせいでよけい寒いのは嫌だが、そのフワフワとした空から降ってくる
物体は誰の心も癒し、温かい気持ちや楽しい気持ちになるのだ。
佐倉蜜柑も例外ではない。

「お前、何やってる?」
「え……?あ、棗!」

ポケットに手を突っ込み、制服を着崩している少年―――日向棗だ。
棗は蜜柑が転校してきた当初、かなり荒れており、
笑顔をめったに見せない一匹狼で、色々と嫌な噂が絶えなかった。
そんな棗を癒し、大切な心を気づかせたのは、蜜柑。
もっとも、蜜柑にそんな気持ちはなかったが。
彼女は誰のためでも全力でぶつかり、優しさで包んで癒す。
冬だから教室は電気をつけないと暗い。棗はその細い手で
電気をつける。

「寒いな」
「そうやなぁ〜。ふふ、だって雪が降ってるからね!」
「……雪?」
「そう!なぁなぁ棗来て!綺麗だから!」

半ば強引に棗を引っ張り、窓の近くにこさせる。
にっこりと笑う蜜柑をよそ目に、棗は外を覗いた。

「…………」
「………?」
「…………」
「……って!何か言わんかいッ!」
「寒い」
「それだけかッ!」

蜜柑はツッコンで、苦笑した。まったく彼は全然変わらない。
他に言いたい事があるだろう。だってその顔は笑っている。
不器用で冷たいけれど、フワフワとして温かい、
まるで雪のような彼に、彼女の心は幸せで満ちていた。


あとがき

どうしよう短い!学アリの小説というリクエストだったのですが、
王道CPのこの二人になりましたvこんなんですが
お持ち帰り自由です、よかったらどうぞーっ!
リクエストありがとうございました。



(20061009)

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