今、こうやって話したり抱きしめあったりできるのが、最高に幸せ。
だって最近は全然してくれなかったから。棗の、馬鹿。
セクハラとかは人前でいっぱいやるくせに、二人きりになっても
恥ずかしいんだかなんだか分からないけど、してくれないんだもん。
ウチはいつも準備万端どっからでもかかってこい!って勢いなのに。
恋にはオクテなんだな、棗ってば。そんな棗が、ひどく愛しい。












  抱きしめて キスして それから…












「うーん、やっぱりこのケーキは美味しいなぁ〜」
「……あっそ。俺にはどのケーキも同じにしか感じないけどな」
「もーっ、棗はもう少し味わったらどうや?せっかくセントラウン一の最高のケーキやのに!」
「……ふん」


あー、憎たらしい!普通に美味しいって言っちゃえばいいのに。何でそれができない?
本当は好きなくせに、苺のショートケーキ。だって食べるたびにほんの少し、
幸せそうなんだもん。そして、最後の最後に苺を食べるつもりみたいで、
端っこに方に残してある。本当に笑ってしまいそう。いつもクールで苺が好きって
感じじゃないのに、こういう面を知っているのはウチと流架ぴょんと蛍くらいかな?
なんかちょっと嬉しいかも。ウチはにた〜と笑って、棗を見る。


「なんだよ……」
「うーん?別に、棗は素直やないな〜思って」
「悪かったな、どこぞの馬鹿と違うからな」
「何やそれ!遠まわしにウチの事言ってるんか!?」
「他に誰がいるんだよ」
「むかつく!この、アホ馬鹿棗!」


椅子から立ち上がって、ポカポカと棗を叩く。もちろん本気じゃない。
じゃれあいみたいな、軽い感じ。棗はははっと笑ってる。
それを見ちゃうと、ウチの心は花が咲いたみたいに嬉しくなってしまうんだ。


「何笑いながら叩いてるんだよ」
「はは、じゃあ棗は何で叩いてるんに、笑っとるん?もしかして本当はマゾ?」
「違う。燃やすぞ?」
「すみませんすみませんごめんなさい!」
「分かればよろしい」
「何でそんな上から目線やねん」
「さぁーな?」









ゆくっりと食べていたから、もう深夜に突入してしまった。ウチはあんまり
太るとかそんなの気にしてないからいいんだけど。
深夜というと、やっぱりそういうのをしたくなってしまうんだよね。
まだ小学生だけど……いや小学生だからこそこういうのを余計にしたくなる。


「棗、ウチまだ口の中甘い……」
「……何が言いたい?」
「もぉ、何でこういう時もノリが悪いんや?」
「……分かったよ」


頭をかいて、棗はウチをぎゅうっと抱きしめた。ほんのりシャンプーの香りがする。
やっぱ慣れてないから、心臓がホント壊れるかってくらいドキドキしちゃってるよ。
あぁ、聞こえてないよね?聞こえちゃだめだよ、こんなの。
だってウチばっかり緊張してるから、棗はこういうの慣れてるもんね、多分。


「……棗、もっと強く抱きしめて」
「ん……。あんまりすると苦しいぞ?」
「それでいいんや。なんとなく」
「…………」


何言ってるんだろ、でももっとドキドキしたいの。棗はそう思ってくれてる?
棗の唇が近づいてきた。そして、触れる。ふにゅっとマシュマロのように柔らかくて甘い。
さっきケーキ食べたからかな?とろけちゃいそうだよ、棗。


「……ん、んううう……む……」
「……はっ、あ……甘い……」


口を離したら、いっきに夢から覚めた気がした。きもちよかったのに。
酸素が足りないから、はぁはぁと息が荒い。やだ、なんか誘ってるみたいだ。
いつからウチはこんな変態になったんだ?もっと、欲しい。


「すごい、甘かった」
「……うん」
「顔赤いぞ?どうした?」
「何でもないんよ……」
「なぁ、」
「うん?」


またキスがきた。まったく何でこんな強引なんだろう。そのまま床に倒れる。
棗の髪が頬に触れた。あ、どうしよう。何がって?棗の目が本気だから。


「……みかん」


切なそうな赤い瞳、とっても綺麗。吸い込まれそう。
制服のリボンに手をかける。子供だからたいしてそれはないけど。
やっぱまだこういうのは早いような気がする。そう思うと、
今やってる事が恥ずかしくて恥ずかしくて死にそうになってしまった。


「な、つめ……」


甘い、甘い時間。私は抵抗する事なく、それを受け入れた。









あとがき

なつみかん甘々との事でしたが、違う意味で甘いのになりました(爆)
ケーキ食べた時にキスすると、あんな感じになっちゃうんでしょうね。
未宇様に捧げます。煮るなり焼くなりどうぞ!お持ち帰りも平気ですv

(20060901)





[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ