「はい、じゃあ流架ぴょんと蛍!」


口に含んだソレを噛み砕いてしまいたかった。真正面にいる
流架君の顔は緊張とか恥ずかしさとか酸素足りてる?みたいな、顔が真っ赤だ。
この時蜜柑の頭をひっぱたいて、こんなんできるか阿呆と言えばよかったんだ。
でも何でそうしなかったのか。やっぱり負けは負け(いや負けとは違うけど)
だから、逃げたくないっていうか。まぁ、そんな事は絶対ありはしないけど、
相手が流架君だから?なんて。違うわよね、そうよね。


「ごめん、流架君」


じゃあ、いただきます。






       ばつげーむ!







「なんかつらまんなー」


ぽつりと呟いた蜜柑の言葉に、私達は珍しく頷いてしまった。
ケーキも食べちゃったし、紅茶も飲んだし、遊ぶものもないし。
もう夜だから外で遊ぶこともできないし、ホント最悪。
でもこのまま寮に帰って一人寂しくいるもの嫌だし。

じゃあどうするの?

思いつかないから、今こうやってだらーっとねっころがってるんだ。


「……、ひま」
「俺も、棗何か楽しい遊び考えてよ」
「無茶言うな」
「もう、つまらんつまらんつまらん!」


うっさい、残念な事に今はバカン銃もってないから撃てないんだ。
っていうか撃つ気になれない。ホント暇。
まるで何もない砂漠の中、たらたら歩いてる感じがする。暑いし。


ふと目に入ったものがあった、それはさっきまであたし達が
食い散らかしてたもの、長くて細くて一部分抜かして後は黒いやつ。
あぁ、なんか漫画で読むな。それを使った嬉し恥ずかしの罰ゲーム。

罰ゲーム?

なんか身体の中でうずいたものがある、うずうずするな。あ、何だっけ?
あたしこういうの大好きなんだ。言い方悪いけど人が恥ずかしがってる
のを見たいっていうか、なんていうか。


「ねぇ、ゲームしない?」


王様ゲームってやつよ、知ってるでしょ?











「王様だぁーれ?」
「あ、俺だ」


お前かよ。多分二人ともそう思ったに違いない、あたしもそう思っちゃたし。
自慢じゃないけどあたしは運が強い。だから王様はあたしだと
思ったんだけど、残念。もしあたしが王様になったら、そうね、
定番でポッキーゲームとか?さっき見た黒いやつってポッキーの事。
それで思いついたものなんだけど、おもいのほか皆のってくれて少し嬉しかったりする。


「じゃあ……」


ごくり、生唾を飲む音がした。


「1番と3番のやつが、えっと、3回回ってワンワンワンしろ」


ワンワン?


言った本人の顔が少し赤い気がする。なんか罰ゲーム(っていうのかしら?)
っぽくない。っていうか絶対棗君はやったことない、王様ゲーム。

やっぱり運がいいあたしは、2番だった。1番の蜜柑が、3番の流架君が
わんわんやってる。うわぁ、すっごいまぬけ。これで流架君が
女装してたら、間違いなく写真にとって売りさばいてたのに。


「も、もう何やねん!棗のあほーッ!」
「……あーおもしろかった」
「あんた超棒読みやん、今の」










次、王様は蜜柑だった。あーよかったこの馬鹿はあんまり
いい事言わないから、きっと大したものじゃないはず。


「んふふ、えーっとな〜、う〜んと、」
「早く言えよ」
「もう、何でそんなえらそうなんや!」
「いいから早く言いなさいよ」
「うっ……。じゃ、じゃあな―――」



蜜柑が言った罰ゲーム、多分一生の恥になるだろう。











「はい、じゃあ流架ぴょんと蛍!ポッキーくわえて〜」
「ふわえてるはよ(くわえてるわよ)」
「うむむ……」


いつもにっこりと笑う蜜柑が、何故だろう、今は悪魔の笑みに見えてしまう。
棗君は大丈夫か?なんて聞いてくるけど、腹の底では
笑ってるんだろうちくしょうめが。いつまでもこのままじゃいけないから、
少しずつポッキーを食べる。あーあ、流架君の顔真っ赤すぎて笑える。

後、10センチ。

顔近いってばちょっと。なんかあたしまで恥ずかしくなってきた。


「あれ?蛍顔赤いよ?」


ええい、うるさい。後5センチくらいのところで、流架君の歯が
力を入れてるのが分かった。あー、ポッキーを落とすつもりなんだ。
なんだかほんの少し寂しかったりする。


「あー!落ちちゃったやんか!」
「………流架」
「ごめん、今井」
「…………」
「やっぱ恥ずかしいよな、あはは」



うん、そうだね。でも、何について謝ってるの、流架君?











「じゃ、バイバイ!」
「じゃあな」
「また明日ーっ」
「さよなら!」


あたし達が遊んでたのは蜜柑の寮だったから、3人で歩いて自分の
寮へと戻る。なんか棗君は用があると言って走って行ってしまった。
だからあたしと流架君で帰る。なんか恥ずかしいかも。


「今井、あのさ」
「何?」
「さっきのヤツ、少し残念だったかも」
「…………?」


揺れる腕と手、軽く流架君の手に触れたとき、月の光以外は全て
闇の中で、口が動いた。


「最後までやりたかったかも、なんてね?」















あとがき

うっわ最後の台詞で裏に続きそう。流架×蛍(+なつみかん?)なお話。
なんかもう、ねorz まだ恋に気づけない微妙な四人の話でした。
王様ゲームってネタはありがちですが、楽しいですよね。

(20060907)





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