「何飲む?」
「紅茶がいいわ」
学園にある自動販売機には、もう冬用としてあたたかい飲み物ばかりが並んでいた。
何故かここには暖房が効いてないみたいで、吐く息が白い。
コートに手を突っ込んでる蛍の手はもうがじがじで冷たくなっている。
鞄からお財布を出して、お金をいれて、赤いボタンを押す。
ガコンッと小さな缶が二つでてきた。はい、と言って流架は蛍に渡す。
「……ポケットから手を出すときって、何か嫌だわ」
「あー、分かる。寒いもんね」
「でも今はあたたかい紅茶があるからいいわ、……よっと……」
そう言って缶のふたを開け……ようとひねってみたが、なかなか開かない。
あー、早く飲みたいのに!と悪態をついて、頑張ってみたが開かない。
「な、何よこれ……!じらすんじゃないわよっ」
あははっと流架は笑ってしまった。いつもクールな彼女が、
こんな事で困ってる、面白おかしい光景に。
「かして、あけてあげるから」
これでは蛍が可哀想だと思い、缶をとってひねってみた。
拍子抜け、なんだ簡単に開いたじゃないか。
「はい、どうぞ」
「………ん」
「?」
蛍は顔がほのかに赤く染まっていて、何かが気に入らないのか、眉が少しつり上がっていた。
流架と目があうと余計に顔を赤くして、すたすたと先を歩いていく。
開けてやったのに……と不思議に思いながら、流架は蛍の後を追った。
(何よ、開けられないからって馬鹿にして……笑ったりして!)
いつもクールな蛍は、笑われることが大嫌いなのだ。
(20061112)