ワヤスミ本家

□夜明けの夢なら
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「だってほっとけなかったんだもん……」


××××××

昔の夢を見て目が覚めた。
周りはまだ薄暗い。
そして、身動きが取れない。
「……和谷」
背中から抱きしめている同居人に、伊角は思わず声をあげた。
「…………」
当たっているのだ。
同居人の、性器が腰に。
「和谷……っ」
例によってわざとだろうと、伊角は無理矢理腕を抜け出す。
「……和谷」
起き上がって初めて、彼がぐっすり眠っているのに気付いた。
その横たわる体が、思うより大きいのに改めてドキッとする。夢の中より。
今まで伊角を『抱きしめ』ていた腕は長い。夢の様に『抱きつき』はしない。
伊角は息を吐いて、ひとさし指で和谷の頬を撫でた。
「……」
寝顔はまだ幾分幼く見えるのに安心してしまいつつ、先ほど彼が当たっていた所を意識すると胸騒ぎがする。
男の生理的なものだろう。寝起きを共にしていれば、たまにそれを朝っぱらからあっけらかんと和谷が言う事はあった(そしてそれでなだれ込む事もまれには)。
しかし、もし彼が夢を見ているなら、どんな夢を見ているのだろう?
「……和谷……?」
柔らかくて危ないグラビアアイドルの夢だったりしないだろうか。
それは嫌だ。
いやらしい、不潔だ……。
と反射的に思い、伊角はぶんぶんと頭を振る。
「っ」
バカらしい。見ているのかわからない夢にまで嫉妬するとは。
「……んぅー……」
伊角の内心の暴れっぷりに反応したかの様に、唸り声をあげて和谷が寝返りをうつ。
「……」
伊角は唾を飲んで、恋人のスウェットのゴムを指で静かに引いた。
彼が目を覚ます前に。
これを何とかしてしまいたい。
突然、伊角に焦りの様な危険な気持ちが湧いた。
大の字になった和谷の下肢の下着ごと注意深く下ろして、身を屈めると、彼自身にそっと口をつける。
「ん……」
抱きしめられたのはこの自分だ。この高ぶりを押し付けられたのは他ならぬ自分だ。
だから、こうする。
まだ日が上がらず、世界が灰色なのは都合が良かった。
湿った筆先を舌で舐めて、苛める。じきに水音が立ち、唾液が茎を滑るのを待って、えずきそうになりつつ伊角は喉まで迎えた。
「……んぐ」
愛しいそれは更に質量を増す。和谷の寝息が少し乱れた気がして、目を覚まさないかしばらく様子を見つつ、歯を立てない様注意して。
「…ん…む」
かなりおかしな事をしている自覚はあるが、ここまで来ては引き下がれなかった。幾度も唇を上下させ、伊角は添えていた手で少し乱暴に袋の方も触る。
濡れたデリケートな皮膚の熱さに興奮した。
早く、楽にしてやりたい。もっと気持ち良い夢を見て欲しい。
いつも恋人がイイと言う所を重点的に攻める。終わりが近いのが、筋肉の緊張で分かる。
「……ぁっ」
熱い体液が口内に飛び出すのを喉で受けてしまい、伊角は反射で唇から性器を離してしまった。顔にかかる白に慌てて、後は全部飲もうと吸い付く。
「……ん……」
熱中している最中、和谷が身じろぎするのに、心臓がびくっとした。
「……んぁ?」
急いでその下着を上げようとするが間に合うはずもなく、
「……え?……」
鳩が豆鉄砲をくらった様な彼の目が自分を見ているのを、伊角は痛い程感じる。
「うわあああっ?!!!」
窓をガタガタと揺らせる程の和谷の叫びが、朝霧にこだました。
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