ワヤわんこ

□いぬとゆき
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古い童謡を、思い出した。
犬は喜び庭駆け回り。猫はコタツで丸くなる。
ワヤは雪の中で遊ぶのが好きだ。

「毛糸の帽子、ちゃんと被れって言っただろう」
「だってー、とちゅうでジャマんなったんだもん」
ダウンを脱いだワヤのわんこ耳は凍えて、髪の毛も雪が絡まってめちゃくちゃになっている。けれどワヤはけろっとして、渡したホットミルクを飲んだ。
「なんかね、別のわんこに会った」
「へえ。近くの子かな」
俺はタオルを持ってきて、とりあえず頭を拭いてやる。シッポも雪に濡れてるのがものすごく気になる……。
「たぶんね。そいつと雪がっせんしたよ。オレ勝ったよ」
楽しかった遊びの報告に、ワヤのシッポは揺れる。う……タオルで拭いて良いだろうか。
耳は、どさくさに紛れて髪と一緒に拭けるが、シッポはそうはいかない。ぱたぱたするのに触りたくてうずうずする。
ワヤと暮らし始めてしばらく経つ。でもわんこに関して、俺には未知の部分が多すぎる。
五感が鋭くて、脚が早くて、出し入れできる牙と爪があって、犬のミミとシッポがついてる。あと、主人への忠誠心……。それ以外はワヤはほんとに普通の子供と変わらない。
だから、シッポなんかに触りたいと思うのはワヤに失礼だと思うし……でもそれがぱたぱた振れるのを見ると、どうにも可愛いくて。
「ワヤ、……雪で濡れてるからシッポも拭こうか」
「えーいいけど。ねえイスミさん」
「ん?」
ワヤのシッポは不思議な感じがする。可愛いのにしなやかで強い。
「……イスミさんてオレのシッポ、好きだよね」
「え?!」
「シッポだけ」
ワヤが……何かふて腐れている。
「いや、そんな事は……っ」
「うーそだー」
「そんな事はないから!」
「どうだろ」
すねたワヤの目が痛々しくて、ミルクのカップを持つ小さな冷たい手ごと包んだ。
「あのな。……シッポだけ好きになったってしょうがないだろう」
「……じゃあ」
と、ワヤは言った。
「だっこして?」
……やっぱり、弟たちと同じ、子供だと思う。但し、弟は首筋を甘噛みしたりしないけど。


⇒End。。。


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戌年ならば!ハイブリッドいにゅ息子から。ワヤが遊んだというのはシンドーわんこです。

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