ワヤわんこ

□Dog (y)Ear
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オレのシッポとミミは、たいてい立ってる。たれるのはハラヘッタ時とイスミさんにしかられた時ぐらい。
そのシッポを、いきなりつかまれた。
「うひゃっ!」
ふり返ると、イスミさんがシンケンな顔でオレのシッポをにぎってる……。
「い、イスミさんっ?!」
「……」
「はなしてよ!シッポっ!」
むずむずして落ち着かないじゃん!
「不思議だ……」
「なにがっ!!」
はなしてもらおうとぶんぶん振って逃げようとするけど、イスミさんの手につかまったまま。てゆーかなんかヘンだよこのイスミさん! いつものニオイじゃないし!
「ワヤはシッポが弱点な訳じゃないんだな……」
「は?! ジャクテンなんてないよオレ!」
ほんとは一つだけあるけどね。
「……ドラ〇もんはシッポを握られると力が抜けてしまうんだ」
「オレ、どらナントカじゃないもんっ」
「古典の絵物語の、猫型ロボットだよ」
「オレわんこだもんっ、知らねーよっ、はなせ!」
思わず、ノラわんこの時の言葉が出る。
「シッポ触られるの嫌?」
イスミさんのほっぺた、赤い。やっぱオカシイ!!
「やだよっ」
「じゃあ耳は?」
「ひあっ!」
今度はイヌミミを両手でギュッてされた!
「〜〜っ!」
「あははっ、変なかおー!」
オレはガマンの限界で、足をばたばたしてイスミさんをけっとばした。
「いたっ……」
そこまでするつもりはなかったけど、イスミさんはふらふらしてゆかにドサッと転がる。
「っ、イスミさんが悪いんじゃん……っ」
って言うけど、ご主人さまをふっとばすなんてワンコとしてはすっげーモンダイだ。イスミさんにかけよって、
「……だいじょうぶ……?」
イタイとこがないか聞く。
「……大丈夫じゃない」
「ごめんイスミさんっ! どこイタイ?」
「ワヤのばか」
うわ大変大変! イスミさんがナミダ目だ!
「ば……ばかだもんオレ。ごめんなさい……」
ただのわんこだし。イスミさんだけに弱いし。
イスミさんのナミダをなめてあげようと、顔を近づけたら、
「えい!」
……またミミつかまれた。
「この耳とかしっぽがねー」
「……は?」
ナミダのにじんだ、とろんとした目でじっと見つめられる。なんかドキドキする。ドキドキしすぎてハナミズが出そう。
「ぱたぱただのぴくぴくだの動くの見てると何か、」
つかまれた力がゆるんで、イスミさんはオレのミミをさわさわした。
「すっごく……触りたくなっちゃう……」
かと思うと、目を閉じてオレにズルズルしなだれかかって、
「……え? えっ、イスミさんっ、ちょっと!」
ねむってしまった。やっと、つぶされないように体をずらしてイスミさんの頭をオレのひざにのせる。わんこの良く聞こえるミミで、シンゾウの音はちゃんとしてるのが分かってちょー安心した。そこへ、
「イスミン、ワヤヤ、ぜんざいできたよー……あれ?」
アシワラさんがやってきた。ここはアシワラさんちで、イスミさんはオレを連れてシンネンのアイサツに来てたのだ。
「眠っちゃったんだ?」
「……なんかすごいイスミさんヘンになってた」
とほうにくれてせつめいしたら、アシワラさんは舌を出した。
「お屠蘇が悪かったかな」
「オトソ?」
どんなかいじんだろ。イスミさんを変にした悪いヤツなんて、オレがやっつけてやる。
「アルコールに弱いんだねイスミ君は」
また新しいかいぶつが出てきた。
オレはイスミさんを守るわんこだから、どんなやつもやっつけるよ。だからもう大丈夫だよイスミさん。
でも……いきなりシッポつかむのはやめてほしいかも。


⇒End。。。

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