ワヤスミ本家

□*** affair ***
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恋や恋愛とは、最大の主観的行為であると言ったのは誰だったか。
何かがきっかけで、和谷をここまで頑なにさせた。
今、伊角は平気ではないと答えたが、果たしてそれを和谷が理解することがあるのかどうか。
年上の友人として、恋人として、和谷を導く立場と責任をいつも伊角は考えていた。例え和谷の目が他の人間に向いたとしても、それはむしろ喜ぶべきことかも知れないとさえ思う。
理性で、そう思い、行動するだろう。
心は、きっと立ち直れない。
伊角は衝動的に、和谷の肩を畳の上に倒した。
「い、伊角さんっ?!」
起き上がろうとする和谷を力ずくで押さえつけ、急く様に片手でその着衣を半分下ろす。湿り気のある和谷自身を、躊躇なく口に含んだ。
「…っ…!い、すみさん…ッ」
和谷の下肢に力がこもり、息が荒くなる。伊角の口腔により成長したそれは、引き剥がそうとする和谷の手より早く奔流を迎えた。
全てが愛しい。残滓まで舐めとると、若い彼は直ぐにまた屹立する。
「和谷…」
見上げると目が合い、和谷の口は「何で」とため息のように開いた。
伊角は黙って体を起こし、和谷の腰に跨った。
全てが青い世界だ。街灯の光が、薄く差し込む。
膝立ちで片手を和谷に添え、慣らす様に半分乾いている肛口に含ませようとするが、上手くいかない。
「伊角さん…」
時間をかけて徐々に重力に任せると、和谷のそれがようやく伊角の中に納まった。
半身を起こした和谷の抵抗はもうない。茫然と見上げてくるその目は丸く、幼い。
まるで自分が和谷を強姦している様だと、伊角は一人薄く笑った。いや、これは強姦なのだ。
「わ、や…」
体温が馴染むまで、と、伊角は和谷の強い髪を撫で、額に口付けた。
「和谷…」
名前を呼んで、その体臭を、体温を感じる。それだけで、伊角は半分が満たされた気がした。
けれど、心はまだ離れたままだ。
「…ごめんな…こんなことして」
「伊角さん、」
「お前が、…欲しかったんだ」
一番簡単な言葉で、伊角は告げた。
身の内の彼は熱い。それを感じるだけで、伊角の身体は間欠的に、あるいは呼吸に合わせて収縮してしまう。
「…ごめん、和谷」
乱れてくる息の下で、伊角はもう一度謝罪を口にする。
一度も、伊角から求められた事などなかった。
言葉も、行為も。
その伊角が今、自分を欲しいと言った。強引な接合にも驚いたが、彼にその様な欲があった事に、和谷は新たな感情が起こるのを抑えられなかった。
「伊角さん、…謝らなくていいから。だから、…俺のこと好きにして? どうして欲しいか言って?」
声が吐息の様に低く、小さな部屋に響く。伊角がどうなるのか最後まで見たかった。
「わ…や…」
伊角の頬に朱が走り、腰がふるふると震えた。和谷に散々嬲られた排泄口が、性器と化して潤んでいるのだ。
伊角の腕が和谷の頭をかき抱き、拙く身体を揺する。
けれど、快楽への協力を和谷に求めようとはしない。切なく喘ぎ、名前を呼ぶだけだ。
「…伊角さん、俺もう、」
和谷が自分から動こうとした寸前、伊角がかすれたため息をもらした。
「わ、や……して」
目蓋をかたく瞑り、伊角は告げた。

■ □ ■ □

「悲しかったけど、嬉しかった。今日」
一つの布団に入って、和谷は言う。
「伊角さんはさ、多分色々考えすぎなんだよ」
「…悪かったな」
「うん、悪い」
でも、と続ける。
「俺も、悪いんだ」

***END***
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