頂き物、捧げ物

□スパイシーデート(稲妻11)
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スパイシーデート


日曜日、晴天、デート日和。
同じ場所に住んではいるが、一緒に出ていって妙な勘ぐりを入れられたら嫌だという不動の意見に従い、商店街で待ち合わせることにした。
昼時、指定時刻15分前に、鬼道は煉瓦広場に向かう。30分は待つであろうので、読みかけの文庫本を開いた。
不動は、鬼道が本を読み終えてから更に15分後に、ちんたら歩いて現れる。鬼道と目が合うと、悪びれもせずに言った。

「待たした?」
「いや、そうでもない」

鬼道の答えに、不動は不満そうに舌打ちして、しかしすぐにいつものニヤニヤした表情に戻る。

「とりあえず飯食おうぜ、飯」
「そうだな。サイゼでいいか?」
「いいよ、金ねーし」

短い会話を交わし、目的地が決まった。
鬼道がさり気なく不動の右に回り、二人並んで歩き出す。
アーケードを抜けると、休日に家族でお出掛けらしい車がせわしなく行き来していた。

「キザすぎ。ムカつく…」

鬼道の肩越しに、通り過ぎる車を眺めながら不動は呟く。
聞こえないふりをして、鬼道は不動の右側を歩き続けた。
駅ビルの中のファミレスは、少し混雑している。
忙しない雰囲気に流されるままに、お食事はハイペースで進んだ。
それに比例するように、不動のグラスが早々に空になったのを見届け、鬼道は立ち上がる。

「ついでに持ってきてやる。何にする?」
「…ウッゼぇ。烏龍茶で」
「分かった」

舌打ちしつつもちゃっかり注文を申し付ける不動に苦笑しながら、鬼道はドリンクバーへ向かった。
二つのグラスを満たして席に戻ると、不動はメニューを広げて難しい顔をしている。
見ているのはデザートのページのようだ。

「何を頼むんだ?」
「うっせぇよ放っとけ」
「因みにオレはバナナシフォンを注文しようと思う」
「……、ミニバナナパフェ」

限られた予算の中で二つは頼めないと判断した不動は、どちらにするか決めかねていた様子。
すぐに運ばれてきたデザートは、鬼道のぶんも結局殆ど不動の胃に収まった。
やがて全てのお皿はキレイに空になり、さてお会計という時。

「個別でお願いします」
「あれ…?」

ウエイトレスの「かしこまりました」に被せて、不動が妙な声を上げた。

「鬼道チャン、てめぇのチャームポイント消えてますよ」
「ん?」
「マント」
「ああ…」

言われてみれば背中が寒い気がする。
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