頂き物、捧げ物

□遠い人(稲妻11 源鬼、佐久鬼)
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自分の出番が回ってこない、そんなの常々。それは喜ばしい事であり、自分達の強さの証明でもある。

「やりましたね、鬼道さん」
「ふん、当然だ」

十何メートルか先、親しげに鬼道の肩を叩く佐久間を眺め、源田は溜め息を吐いた。
試合中、それが鬼道が唯一笑う時。その他の時間、鬼道はいつも気難しげに眉を寄せ、何か悩むような顔ばかりしている。
同じグラウンドに立てることは幸せを感じるが、一番遠い立ち位置、それが苦しかった。

「源田、ボンヤリするな」

考え込んでいたために気付かなかったが、いつの間にかすぐ傍に鬼道が立っている。ハーフタイムが始まっていた。

「鬼道、笑ってくれないか?」
「…は?」

口を吐いたのは、そんな言葉。言ってしまってから、源田は激しく後悔した。

「いや、何でもない。忘れてくれ」
「源田」

短く名前を呼ばれ、源田は視線を落とす。鬼道は、源田を見上げニヤリと口元を歪めた。

「お前が、ゴールをしっかり守ってる間は、笑っていてやる。失望させるな」
「…ああ」

試合再開のホイッスル、再び離れて行く鬼道。その後ろ姿を見ながら、源田は小さく笑った。

遠くとも、その笑顔は自分にも向いている。

END
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