頂き物、捧げ物
□一方そのころ(稲妻11)
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病室は、今日も今日とて元気な笑い声に満ちていた。床に円陣を組みトランプに興じているのは、かつて敵として戦った雷門中学と帝国学園のサッカー部メンバー。それぞれ、サッカーの試合中に負った怪我が原因で入院中だ。
「いえーいっ!!いっちば〜ん!!」
叫んで立ち上がり、ギプスの巻かれた腕を掲げたのは、雷門のネコミミ。即座に飛んできた看護婦さんに、五月蠅いと注意された。
「お前はいちいち騒ぎ過ぎなんだ。もう少し弁えろ」
マックスを憎らしげに睨み文句を言うのは、帝国のでこっぱち、辺見。手元にはまだ大層な数のカードが残っていた。
「辺見くん負っけ惜しみ〜」
「なんだと!?」
「マックス、また怒られるよ」
「辺見、挑発に乗るな」
喧嘩に発展しそうな二人を、他のメンバーが宥める。そんな平和な風景を、少し離れたベッドに腰掛け眺めていた源田の肩に、僅かな重みがかかった。
「?」
不思議に思い振り返る源田。ベッドの主である影野が、源田の肩にもたれて舟をこいでいた。
影野も、源田と同じく今は起き上がるので精一杯、とても仲間たちのようにゲームに加わるなど出来ない。それでも、楽しげな光景を見ていたくて、ベッドから起き上がっていた。けれど、痛み止めなんやらの効果に負けてしまったらしい。
「影野、寝るなら横になった方が…」
「ん…」
源田が揺すっても、影野は小さく頷くだけで布団にもぐろうとはしない。源田は溜め息を吐いて窓の外を見上げた。
ポカポカ太陽が病室の全体を照らし、気温を上げている。これならば風邪を引く心配もなさそうだ。
「…まぁ、いいか…」
影野の体温が心地よく、源田もつられて眠くなってくる。目を閉じてしまえば、熟睡するまでそう時間はかからなかった。
「…とりあえず、今日の勝負はお前たちに預けておく」
佐久間が、突然カードを放り出し言う。不満顔の辺見は、佐久間が顎で指した方に目をやり納得した。
お互いにもたれて眠っている源田と影野。なんとなく無防備で、邪魔出来ない雰囲気の寝顔。
「そだね、今日はお開きにしよっか」
マックスも、散らばったトランプを集めながら心なしか声のボリュームを下げた。
「いつか、トランプじゃなく、またフィールドで戦いたいな」
「そうだな。今度はお互い、楽しもう」
今はまだ、その時に備えて。
とりあえず、みんなで寝ておこう。
END
→後記