頂き物、捧げ物
□ツイてない?そりゃ何時もの事だ。(fromおるサン)
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真っ青な空に吹き抜ける風。
爽やかな春の風と共に俺の頬に当たるのは、何処からか連れてきたのか不明な牛の荒々しい鼻息。
物凄く生暖かく、物凄く生臭い。
しかも、何故か俺の両脇に居る。
つまり2頭もいる。
何だよコレ、暴れ牛による半田サンドとかでもいうのか?
つうか、なんで牛!?なんで俺!?
もう本気で分からなくなりそうだが、此処は牧場でも千羽山中でもない。
マンモス校としても名高い、雷門中だ。
牛が徘徊をする場所ではない。
此処から逃げ出したい。
だが、俺が動いた瞬間、この微妙に保っていた均衡が崩れるのが、怖い。
牛に蹴られても平気なほど、俺の体は頑丈には出来ていない。
「円堂ー…」
恨みがましく名を呼ぶのは、サッカー部のキャプテンであり、多分……絶対的にこの牛達を連れてきた犯人。
仲間達は、遠巻きから俺を見るだけで助けてくれる気配がない。
まあ、それが普通だよな。
俺が同じ立場なら、同じだと思うし。
だって、サッカーは暴れ牛を相手にする部活じゃないし。
「あー…空が青いなぁ」
思わず現実逃避したくなる。
時計を見れば、まだ10分位しか経っていない。
俺としては、もう1時間以上経っているような感じだったというのに。
もういっそ夕方になって、夕日に向かって牛が走り出したりなんかして、この状態から解放されないかなと思っていた。
その時、この状態に変化が起こった。
「ワン!!」
突然の犬の鳴き声に、両脇に居た牛がブモォォッと唸りを上げた。
「へ?うわぁあああっ!?」
身を縮ませていたおかげで、牛の体当たりからは免れる事が出来た。
でも、走り出した牛達は止まることなく、減速どころか加速しながら、他の仲間達の方へと向かっていた。
「あ、危なっ…!!」
仲間達の驚く声が聞こえ、これから起こるだろう惨劇に思わず目を閉じた。
「フルパワーシールド!!」
「マジン・ザ・ハンド!!」
聞こえてきた声。
恐る恐る目を開けると、牛達は仲間に怪我を負わすことなく立ち止まっていた。
否、止められていた。
牛達の前には、キャプテンの円堂と帝国学園のゴールキーパーが居て、牛達を止めていた。
「これ、が…雷門の練習、か」
「あぁ!」
「流石だな…」
笑いながら話す二人に軽く頭痛を感じた。
「円堂…源王…」
二人に近付いてきたのは、青いマントをなびかせて
いる鬼道だ。
ガツンと言ってやってくれ。
「鬼道…」
「源王、成長したな」
「入院していて衰えたままでは……帝国の名折れだからな」
「お前らしいな」
あしずっこけだよ。
怒るどころか誉めてるよ!
あー、もー俺しかいないのかよ!?
「…なぁ、円堂」
「なんだ?半田?」
「この牛、連れてきたのって…」
「俺だけど?源王が雷門のゴールキーパーの練習方法を知りたいっていうからさ」
「あぁ…互いに練習方法教え合おうという事になって」
悪びれもない返事に俺は円堂に笑顔のまま軽く殺意すら覚えた。
一歩間違えれば、俺だけじゃなく他の奴らも病院送りだったんだぞ?
そう言ってやろうと口を開けた刹那、背後にゾッと冷たいものを感じた。
「え〜ん〜ど〜君〜…」
円堂の名を呼ぶのは、俺達の部の最強マネージャーだった。
「あ、夏未。どうした?」
「どうしたじゃないわよ!また無断で牛を連れ込んで!他の学校の生徒まで怪我したらどうするつもりだったの!?」
「あはは、悪い悪い。でも、誰も怪我なかったんだから結果オーライだろ?」
「結果オーライで片付けないで!ちょっとこっちに来なさい!半田君。ちょっといいかしら?」
嫌な予感しかしない。
でも、逆らえない。
「な、何だよ?」
「この牛達を元の場所に戻しておいて。私は円堂君に話しがあるの。いいわね?」
「は、はい」
ギロリと睨み付けられれば、勿論言えるのはイエスのみ。
この学校で彼女に逆らえる…意見出来るのって、何も考えていない円堂位なんだろうなぁ…
巻き込まれるのは、分かっていたけどやはり、泣きたくなった。
おまけ
半田「なんで俺がこんな目に…」
源王「済まなかった…」
半田「いーよ、別に。円堂の巻き添えは何時もの事だし」
源王「だが…」
半田「だから良いって」
源王「いや…」
鬼道「半田。良く見てみろ。また牛が暴れてるぞ」
半田「なっ…円堂ーっ!!せめてどっか繋いでから行けー!放置してくなー!!」