頂き物、捧げ物

□手のかかることこの上ない
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手のかかることこの上ない


買い物に付き合ってくれないか、という誘い文句は、デートしよう、とイコール。
非常なこと照れ屋で、直接的な単語を嫌う辺見と交際するようになってから、源田も幾分学んだようだ。

「しょーがねぇな…何か奢れよ」

精一杯の不機嫌な表情で辺見が了承すれば、源田は嬉しそうに頷く。
二人で外出届けを出して、休日のショッピングモールへとくり出した。
スポーツ用品を軽く品定めして、何となく気になっていた小物屋を覗く。部活の仲間のお土産に海外製の毒々しいチョコレートを買ったところで、正午を告げる音楽が聞こえてきた。

「約束だし、昼飯奢るよ」
「おう…」

源田が前を歩き、すぐ後ろを辺見が付いていく形で、フードコートに向かう。
途中で源田が手を差し出す素振りを見せたが、辺見は気付かないふりをした。

「…そのさ、あんまり手とか繋ごうとすんなよな…」
「すまない。人が多いから、辺見を見失わないようにと思ってな」
「ふん…、お前結構ドジすっからな」

注文したオムライスが出来るまで、向かい合う席で談笑。この後はどうしようか、二人で考えていると、耳障りな笑い声がすぐ側で聞こえた。

「ギャハっ。誰かと思ったら、源田ちゃんじゃぁねーの?」

人を小馬鹿にしたような台詞と共に、二人の真ん中に白く華奢な手が置かれる。見上げると、モヒカン頭に赤い刺青という特徴的な外見の男がニヤニヤしていた。

「不動…」
「久しぶりだなぁ源田ちゃ〜ん」

源田は、冷ややかな眼差しを不動に向ける。そういえば、源田はこの男に真・帝国学園で酷い目に合わされたのだった。
一触即発かと辺見はヒヤヒヤしたが、源田の態度は飽くまで冷静で。

「おいおい、つれねぇ態度だな〜」
「暇じゃないんでな。用が済んだらさっさと消えてくれ」

挑発的な不動に対し、ピシャリと言った。
不動は一瞬、濁った緑色の目を伏せたが、すぐに不遜な表情を作り直す。再び不動が口を開こうとした時、オムライスの出来上がりを知らせる受信機が音を立てた。

「取って来てやる。こいつには構わなくていい。何かするようだったら警備員を呼んでくれ」
「お、おう…」

まるきり不動を無視し、源田は立ち上がる。残された辺見は、上目で不動を伺った。
気付かれないようにしたつもりが、バッチリ目が合う。
どんな罵詈雑言を浴びせられるかと思いきや、不動は静かな声で言った。
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