頂き物、捧げ物

□ツンさま相互お礼(稲妻11)
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お弁当


昨日から同じ部活になった転入生は、どうやら自分と同じクラスだったようだ。
元来世話焼きな風丸としては、まだ友達もいない転入生を放っておくのは、好感を持てない相手だとしても気が引ける。
四時間目が終わると同時に、風丸は土門に話しかけた。

「弁当か、購買か、食堂、どれだ?」
「は…はい?」

教科書を机に押し込んでいた土門は、主語のない問いに首を傾げる。
風丸が黙って答えるのを待っていると、どうやら意味に気が付いたようだ。

「あー、弁当。買い食いなんてリッチなこと出来ないって」
「分かった」

タイミング良く席を立った手近な生徒の椅子を借り、風丸は土門に向かい合う形で腰を下ろす。土門は困惑した顔で風丸の顔を見詰めた。

「何してるんだ。昼休みは始まってるぞ」
「あー…」
「弁当なんだろ?」
「う、うん」

淡白な遣り取り。土門の鞄から取り出されたのは、ほんの片手に収まるような包みだった。
風丸は、自分の弁当を広げる手を止め、土門の弁当を観察する。小さめのサンドイッチ的なものが二つ、ラップと銀紙にくるまれていた。

「それだけなのか?」
「だけ…って?」

育ち盛りかつ運動部の少年には、どう考えても足りない量である。風丸の弁当の、半分もないくらいだ。

「ダイエット中…とか?少なすぎるだろ」

その細腰で更にカロリーカットを計っているのだとすれば、土門はミイラにでもなるつもりなのだろうか。
風丸の言いたいことを理解した土門は、困ったように眉尻を下げて笑った。

「いやいや、オレはこれが普通なんだよ。けっこう腹持ちいいんだ、ピーナッツバターサンド」
「そうなのか…」

にしたって、少ない気がする。
色々考えるうちに土門が平然と食事を始めたので、風丸も自分の弁当に箸を付けた。
まぜごはんと、甘い卵焼きと、ほうれん草のソテー、それに唐揚げと里芋の煮物。案の定、土門の方がかなり早く弁当を食べ終えた。

「ごっそーさま。…にしても、意外だな。風丸…さん、友達いないの?」
「失礼な!!」

いきなりの失礼発言に、風丸は土門を睨む。土門は慌てて首を横に振った。

「や、そういう意味じゃなくて!!」
「じゃあ他にどんな意味がある」

不機嫌をわざと滲ませ、つっけんどんに返せば、土門は目線を落とす。
そのまま少し黙り込んだ末、躊躇いがちに口を開いた。
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