頂き物、捧げ物
□スパイシーデート(稲妻11)
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「席に忘れて来たみたいだ。見てきてくれないか?」
「分かった待ってろ間抜け」
気のせいでなければ確実に鬼道を罵りながら、不動はもと来た通路を小走りで戻って行った。
「やっぱり会計は一緒で」
「はい、かしこまりました」
その隙に、二人分の料金を払う。
レジに居ると邪魔になるので、鬼道は出口前で不動を待った。
間もなく片手に赤いマントを持って、意気揚々上と不動がやって来る。
既に出る準備万端な鬼道を見た途端に、得意気な顔は苦虫を噛み潰したような表情に変わった。
「お会計、済んだのかよ」
「ああ。待たせると迷惑になるからな」
「嫌味な奴…」
不動はぷいとそっぽを向いて吐き捨てると、先に立って店を出る。
鬼道もすぐに追い掛け、不動の左側に並んだ。
近くのスポーツショップで新しいスパイクを見て、本屋で雑誌を立ち読みして、公園のベンチで休憩するうちに、辺りは暗くなり始める。
合宿所の門限が近いので、今日のデートはここで終了だ。
「じゃあオレ先に帰る。鬼道チャンはちょっと時間ずらしてくれよ」
「ああ、そうする」
不動の膝には、本日の収穫である靴下の束が入った袋が乗っかっている。
鬼道は、自分の持つ同じ柄の袋を持ち上げてみせて言った。
「…だが、お揃いの袋を持っていたら一緒に出掛けたことがバレるんじゃないか?」
「………」
不動は、微妙な顔をするだけでいよいよ何も答えない。
ただ、伺うように鬼道を見上げた。
「オレが一緒に持ち帰って、後で部屋に届けよう」
鬼道の提案に、不動はヒクリと口元を歪める。
「マジで、そーいう紳士的なオキヅカイ、イライラするんだけど」
どうやら気付いていたようだ。
それはそうだろう、不動がそこまで鈍い人間でないことは、鬼道が一番よく知っている。
「だろうな」
「分かってるくせに、何で平気でこーゆうこと出来るワケ?」
挑むような視線を真っ直ぐに見詰め返し、鬼道はキッパリと言った。
「ウザイとは言われても、嫌だとは言われてないからな」
不動は、その答えにポカンと口を開き、次の瞬間盛大に吹き出す。
ひとしきり笑った後、袋を持っていない方の手を鬼道に差し出した。
「やっぱ鬼道チャンにはかなわねぇや。いーよ、今日は一緒に帰ろうぜ」
さてこれは素直に手を繋ごうと言われていると判断して良いものか。迷っていると、不動の方から手を握ってきた。