頂き物、捧げ物
□税込み120円(稲妻11 松半)
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「おいおい、最後の奴は鍵しなきゃ駄目だろ。円堂に怒られるぞ」
声は、後ろから聞こえた。振り返ると、部員募集の張り紙の下、半田が壁にもたれて座っていた。
「しんいち…先帰ったんじゃ…」
涙声でマックスが訊ねると、半田は苦笑を浮かべる。
「ばーか。もう真っ暗なのにお前一人で帰らしたら危ないだろ。誘拐されそうだ」
「さ、されないよ!!」
また喧嘩腰で言い返してしまい、マックスは慌てて口を押さえた。
大きく深呼吸して、ゆっくりと半田に近付く。
「ほら」
半田は、マックスに片手を差し出した。その手の上にはコーヒー缶がひとつ。
「クリスマスプレゼント。なんてな」
これは何という偶然だろうか、税込み120円のプレゼント。びっくりして声も出ないマックスの顔を、何を勘違いしたのか半田は心配そうに覗き込む。
「え、いや、冗談だよ、そんな怒るな…」
「しんいち!!」
「うわ!?」
いてもたってもいられずに、マックスは半田に飛び付いた。不安定な姿勢だった半田は、簡単に尻餅をつく。
馬乗りみたいな体勢で、マックスは半田の唇に自分のそれを押し付ける。暖かいコーヒーの味がした。