頂き物、捧げ物

□クリスマスフリー小説
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しろくろ、一緒


学校の横を通りかかったのは本当にたまたま。部室の電気が付いているのを見つけ、フラリと立ち寄ってみた。

「………」

ボールを抱えたままボンヤリとタイヤに腰掛けていたのは、自称ファンタジスタ。風丸がドアを開けたのにも気付かず、ただ空中を見上げていた。

「何してるんだ、こんな日に」
「うほぁ!?」

風丸が声をかけると、土門は変な悲鳴を上げてボールを取り落とす。飄々としているくせに、妙に小心者なのだ、この男は。

「クリスマスにやることもないのか?」

嫌味を込めた風丸の問いに、土門は情けない笑みで肩を竦める。

「残念ながら、何もやることがないんだ。そちらさんは?」

逆に聞かれ、風丸は片手にぶら下げたケーキ屋の袋をちょっと上げてみせた。

「夜に家族で食べるケーキを、取りに行ってきたとこだ」
「あぁ、なる程…」

足元に転がってきたボールを蹴飛ばすと、土門は器用に片手で受け止める。また膝の上にボールを戻し、土門は独り言のように呟いた。

「家でじっとしてると色々と考えちまってさ。ボール蹴ってれば忘れてられるかと思ったけど…やっぱりどうにもならないな」

それはそうだろう。クリスマスに一人きりだと思っただけで淋しく感じるように、人は出来ているのだ。
ケーキの袋を握り直し、風丸は空いている方の手を土門に差し出した。土門は驚いた顔で、風丸の顔と手を交互に見る。

「そんなに暇ならこれからチキンとシャンパンも買いに行くから荷物持ちに付き合え。そしたら、お礼にケーキ食わせてやるよ」

つっけんどんな言い方だったが、土門は口元を歪めて笑った。

「それなら、今日は風丸にお付き合い致しましょうか」
「ああ、そうしろ」

色白な指と、日焼けした指が絡む。案外と暖かい手を握りながら、風丸はチラリと土門の顔を伺った。
同じタイミングで風丸を見た土門と、視線が合う。

「ぼやぼやするなよ。行くぞ」
「はいはい」

思いの外嬉しそうな声が、少し上から返ってきた。

「まずは商店街」
「おっけー。行こう」

クリスマスに手をつないで歩く、男二人。でも、こういうのも結構悪くない。

Merry Christmas!!
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