頂き物、捧げ物

□正月フリー小説
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願望


神様なんて居ないと思う。
願ったって、叶うかどうかなんて分からない。結局、自分次第なんだから。

「絵馬、買う?」

出店のたこ焼きをバラバラに分解して冷ましていたマックスに、半田が言った。
近所の神社は、新年だけあって大変賑わっている。御守りやおみくじを求める人の列を見ただけで、マックスはウンザリした。

「いらないよ。ボク、神様なんか信じてないから」

思わず本音を口にすれば、半田は少し悲しそうな顔をする。この顔には弱いのだ。

「…んと、じゃあ一枚買おうか」
「え、いいの?」
「うん」

二人で少しずつ出し合って500円の絵馬を一枚購入。これなら焼きそばでも買った方がなんぼか得だろうとマックスは思ったが、あんまり半田が嬉しそうだから口にするのはやめた。
可愛らしい牛の絵馬と筆を、半田はマックスに手渡す。

「マックス、何書く?」
「ん、ボクは…」

いいよ、と言いかけて、マックスはいいことを思い付いた。口元に浮かぶ悪戯っぽい笑みに、半田が首を傾げる。
絵馬の上に並べた文字を見せれば、半田は顔を赤くして俯いた。

「ちょ…そんなの恥ずかしくて飾れないじゃないか…」
「じゃあ、師匠が持っててもイイよ」
「それじゃ絵馬の意味ないし…」

ブツブツ文句を言いながらも、半田は受け取った絵馬に自分の名前を書き加えた。

「目立たないとこに、ぶら下げようか…」

大勢の願い事の中に混じった絵馬は、たちまちどれだか分からなくなる。
満足そうにしている半田の手を、マックスはコッソリ握った。
振り解かれないのが、嬉しい。

「ずっと、一緒に居ようね」
「うん…」

神様になんか届かなくても構わない、結局は自分次第なんだから。

これを願う相手は、キミ。

END
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