頂き物、捧げ物
□正月フリー小説
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つないで
凛々しい袴に、いつものオレンジのはちまき。円堂は、何やら誇らしげだ。
「染岡、早く行こうぜ。初詣!!」
「そんな慌てなくても、神社は逃げやしねぇよ」
「でも急ぐぞ!!」
「はいはい…」
一目散に駆けて行く円堂の背中を、染岡も小走りで追う。既に神社の傍には人だかりが出来ていた。
「染岡、こっちこっち」
神社の石畳、少し先を歩きながら、円堂は手招きする。しっかりついて行こうと思うのだが、反して人混みの中ではその姿すら見失いそうだった。
背中にぶつかられた拍子に足元がよろける。伸ばした手が、空を掴んだ。
「うぉ…」
「染岡っ!!」
無様に倒れる寸前、円堂の声が聞こえる。気がついた時には、染岡は円堂の胸に額を押し付けるような格好になっていた。
「良かった、ビビったなぁも〜…」
そう言って、円堂は染岡の背中に回した腕に力を込める。顔が布に押し付けられて息が少し苦しかった。
「円堂、ちょ…」
「もう少し、このまま…」
誰かに見られやしないかと、染岡はコッソリ辺りを見回してみたが、案外とみんな無関心。安堵の溜め息を吐いて、円堂の胸を両手で押し離した。
「へへ…」
押しのけられたというのに薄ら笑いを浮かべる円堂。
「何が嬉しいんだか…」
「うん、新年早々あつい抱擁。今年もきっといいことあるよ」
「阿呆か…」
円堂の手を借りて立ち上がりながら、染岡も苦笑した。確かに、お参りよりも御利益がありそうだ。
「今年もよろしくしような」
「あぁ…つか手離せ」
「いいじゃんか、お賽銭入れるまでだからさ」
恥ずかしい、けれどこの人混みの中ならば、きっと誰にもバレやしない。
少し迷った末に染岡が手を握り返すと、円堂の笑みが強まる。
「どうせなら家まで繋いでようか」
「お断りだ…」
今年も、いい年になるに違いない。
END