頂き物、捧げ物

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初夢


「さきち、俺と寝よう」

突然そう言われ、宍戸は飲んでいたミネラルウォーターを吹いた。トンデモ発言をかました闇野の顔に思いっきりかかったが、そこは自業自得である。

「な…何言うんですか闇野先輩!!」
「勘違いするな、ただ添い寝してくれればいい…それだけだ…。でも、さきちが相手ならそういう意味でもい…」
「ワーッ!!自重自重!!」

宍戸は更に暴走しようとした闇野の口を塞いだ。因みに部室でのやりとり、他のメンバーも全員聞いている筈だが、いつものことなので全員が華麗にスルーしている。

「とりあえず分かるように説明して貰えませんか…?」

宍戸が訊ねると、闇野はやたら神妙な顔で頷き口を開いた。

「初夢…」
「………」
「………」
「以上ですか!?」

何一つ理解出来なかったのは宍戸の責任ではないだろう。もう一度聞き直そうと思った宍戸の肩に、冷たい手が置かれた。

「おれが説明するよ」
「ギャァアッ!?」

その悲鳴で、みんなもようやく顔を上げる。へたり込んだ宍戸の後ろに、暗いオーラを背負って影野が立っていた。宍戸の驚きなど丸無視して、影野はボソボソと喋る。

「闇野は、佐吉の初夢を見たいから、一緒に寝たいんだ…」

成る程、理由は分かった。

「おれも…」

そして問題も増えた。

「おれも、佐吉の初夢が見たい。一緒に寝よう」
「俺が先だ!!」

さり気なく便乗した影野に、闇野がつっかかる。何時もは存在感も危うい影野だが、しかし今回ばかりは引かなかった。

「佐吉は俺のだ…」
「渡さない、闇の戦士の名にかけて…」

バチバチと、二人の間に黒い火花が飛び散る。

「ちょ…二人ともと一緒に寝ますから、落ち着いて下さいよ!!」

宍戸は慌てて二人の間に入るとそう叫んだ。

「…ならよし」
「同じく…」

宍戸に言われれば弱い二人。とりあえずこれで解決した…と思われた。

「えー、二人ともズルい。それならボクも宍戸くんと寝る!!」
「えっ、ならオレも…」
「じゃあオレも宍戸と寝るってばよ!!」
「お、おれも…」
「私も」
「僕も〜!!」

その立候補者数、軽く30人。添い寝どころではなくなりそうだ。

「勘弁して下さいよ〜…」

初夢は、いつになく騒がしい夢になりそうだ。

END
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