頂き物、捧げ物

□30000hit企画
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シルバーチェーン

さっきからパラパラと捲っている漫画の内容は、ちっとも頭に入らない。意識は、目の前で何やら頑張っている半田に注がれていた。
シルバーのチェーンを、引っ張ったり切ったり落としたり、半田はかなり忙しく手を動かしている。頑張っているわりに妙にモタモタしているのが面白かった。

「師匠は、頑張っても中途半端だよねぇ」
「…それは、喧嘩売ってると受け取っていいのかな?」
「とんでもない」

マックスの一言に、半田は目だけ上げて答える。一応否定しておいた。

「なんか、そういうのイイなぁと思って」
「嫌味か?嫌味なのか?」
「とんでもない」

不器用でもないけど器用でもない。そういうところが好きなんて言ったら怒るに決まっているから、マックスは首を横に振って、半田の手からチェーンを奪った。
半田は不満げにマックスを睨む。それには気付かないフリをして、マックスは半田が何回も失敗しているチェーンの端と端を繋ぐ作業をいとも簡単にやってみせた。

「…出来るのに」
「でも時間かかる。ボクは早く帰りたい」

実際、外はもう真っ暗。学校に残っている生徒は少ないに違いない。
礼も言わずにチェーンを受け取ると、半田はまたマックスには分からない製造を再開した。

「ボクはね、しんいちのそういうところも含めて好きだよ」

どうにも間が持たなくなってきたので、マックスは先程の言い訳をしてみる。半田は何も言わなかった。

「ね、しんいち怒った?ゴメ…」
「マックス」

言葉は、半田の声に中断させられる。マックスはビクリと肩を竦め、怒られるのを覚悟した。
半田は相変わらずの仏頂面のままマックスに何かを差し出す。銀のチェーンに、小さな指輪がぶら下がっていた。

「マックスのぶん、オレとお揃い。だからオレが独りでやりたかったのにさ…」

見れば、半田の胸元にも同じ物がぶら下がっている。

「でも、マックスのそういうところも嫌いじゃない」
「しんいち…」

軽い指輪は、一目で分かる安物。けれど、想いは本物。

「というか、好き…だ」

顔を真っ赤にしながら小声で言った半田に、マックスは飛び付いた。

「ボクも、大好きだよ!!」

耳元で、幸せそうな笑い声。不器用な愛情表現もふくめて、きっとお互いが大好きなんだ。
そのチェーンが繋ぐのは、指輪とキミとボク。

END
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