頂き物、捧げ物
□遠い人(稲妻11 源鬼、佐久鬼)
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試合中だけ、隣に立つことを許される。それがあなたとの最短距離。
近付きたいと願うほどに、距離は広がるばかり。
「雷門に、転入した」
病院のベッドの上、鬼道の言葉に佐久間は目眩を覚えた。長年の努力が実り、ようやく隣に立てるようになったのがつい最近。それなのに、鬼道はいつもそうやって遠退いて行く。
「そうですか…」
「世宇子を倒したら戻って来る、それまで帝国を頼むぞ、佐久間」
「分かり…ました…」
本当は、行かないで欲しいと縋りたかった。けれど、鬼道を困らせるのは本意ではない。
無理矢理作った笑顔は、鬼道の目にどんなふうに映ったのだろうか。
「辞めるなよ、サッカーを」
「え?」
ゴーグルの奥が見える程近い位置、真剣な目と、視線がぶつかった。
「ここは俺の帰る場所だ。お前が待っていなければ、意味がないから…」
ああ、何という殺し文句だろう。佐久間は片目を細め、力強く頷いた。
「待ってます。鬼道さんが、帰って来るまで」
離れてみて、逆に縮まる距離もある。
END