頂き物、捧げ物
□ホワイトデーフリー小説
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いちごみるく
「これは…」
「お返しの、飴」
染岡は、円堂から渡された飴の袋に正直戸惑った。
三角形が非常に可愛い、いちごみるくキャンディ。中学生男子が持つには、ちと恥ずかしい。
「中の一個くれればいいよ、これはお前が持ってろよ」
「何で!!せっかく買ったのに」
「いやいや、コレは駄目だろ」
小学生の女子にウケそうなデザインのパッケージ、もし鞄から覗いた日にはきっと、来月までクラスの笑い物だ。
お返しを貰えるのは嬉しいし、有り難い。けれどこれは、ちょっと困るのだ。
「染岡、甘いの嫌いなのか?」
「嫌いじゃねぇけどよ…」
円堂は、こういうところが鈍い。察して欲しいと思うのだが、きっと無理な話だ。
「染岡の…」
「え?」
俯き加減で喋られるから、円堂の声はよく聞こえない。
コッソリ表情を覗き込んでみたら、円堂は困ったみたいに眉を寄せて笑っていた。
「染岡の色だと思ったんだ。だから、これがいいと思ったんだけど、失敗だったな」
「…チッ」
小さく舌打ちして、染岡は円堂の手から飴の袋を引ったくる。
円堂は目を丸くして染岡を見詰めた。
「すげー嬉しい。けど、恥ずかしいから家で舐めるから」
円堂の驚いたみたいな顔が、次第にニヤニヤ顔に変わる。
「そっか、染岡ちょっとゴツいもんな。ピンクの飴はあんまり似合わないかも」
「ゴツいとか言うなよ!!」
怒鳴る染岡の肩を掴んで引き寄せ、円堂が小さな声で告げた。
「でもさ、オレはすごく、染岡が可愛いと思うんだ。いちごみるく、似合う」
「っ…!?」
ほんの僅かに重なる唇。慌てて円堂を押し返し、染岡は口元を押さえた。
「な、可愛い」
「っるせー!!可愛い言うな、バカ!!」
相変わらず、円堂の考え方はちょっとおかしいと思う。けれど、少し嬉しいと思ってしまう自分も、ちょっとおかしいのかもしれない。
「ありがと…な」
「此方こそ」
END