頂き物、捧げ物

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対極


勢い良く、白と黒のボールに足を振り下ろす。

「わーぉ、残念」

ゴールポストにぶつかり、跳ね返るボール。そう声を上げるマックスを、染岡はギロリと睨み付けた。

「お前今、蹴る前に言ったろ」
「だって、何回やっても同じじゃん」

マックスが肩を竦め飄々答えれば、染岡は悔しげな舌打ち。まさに事実、だから言い訳は出来なかった。

「まだ帰らないの?」
「帰らねぇよ、つか練習しねぇならお前は帰れよ」

既に街灯の頼りない灯りのみが照らす河川敷に、ポツンと二人きり。部活が終わってからかれこれ二時間余り、染岡はずっとこんな調子だ。

「染岡は、妥協というものを知った方が宜しいと思います」
「そういうお前は、もうちっと努力を覚えろや」

マックスの棘のある台詞に即座に返して、染岡は時計に目をやる。短針は真横に近い角度、流石にお腹も空いてきた。

「じゃあ、これで最後な」
「失敗してもね」

マックスの余計な一言を聞かなかったふりをして、膝の上で弾ませたボールを思い切り蹴り飛ばす。ガンっとゴールポストにかすって、それでもボールはネットに沈んだ。

「うわ、惜し…」
「はい、帰ろう」

いつの間にか、すぐ隣でマックスが染岡の鞄を差し出している。引ったくるように受け取り、染岡はマックスに背を向けた。

「コツが掴めて来たんだ、やっぱり今止めてたまるかよ」

ポイッと放り出された、くたびれた鞄。マックスは額を押さえヤレヤレと溜め息を吐くと、それを抱えてまたもとのベンチに戻った。

「…だから、先帰れよ」
「だめ」
「なんで」

ボールを拾って戻って来た染岡に問われ、マックスは少し考える。それから、極めて真顔で答えた。

「ボクが見てないところで染岡が強くなるのは、ムカツクから」
「はァ?」

染岡は思いっきり眉をしかめる。よりいっそう、気難しい老け顔になった。

「それ、どういう意味だよ」
「別にどーでもイイデショ。いいからさっさと終わらせてご飯食べに行こうよ、雷々軒閉まっちゃうよ」
「お、おぅ…」

再びボールを蹴る染岡の背中を見ながら、マックスはポツリと呟く。

「まったく…暑苦しいねぇ」

それでも、不思議と放っておけないのだ。


END


後記:さっそくコメあざす!!何かに執着するマックスって、萌ゆると書いてて思いました。
松染には無限の可能性を感じる!!
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