頂き物、捧げ物
□2010お正月フリー
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波の音、終わりと始まり
愛媛埠頭、吹き付ける海風はとても冷たい。これは下手をしたら水中の方が暖かいのではないだろうかと、不動は思った。
「テメェおいハゲ、何してんだ」
「うっせーロン毛。正月だから自宅でノンビリしてんだよ」
突然降って来た声。かつての仲間である佐久間が、いつの間にか不動の背後に立っていた。
見たところ酷い怪我も治った様子。口元を嫌味に歪めながら、今度は不動が訊ねた。
「テメェこそ、オレの家に何か用かよ。わざわざこんな日に訊ねて来るなんて、よっぽど暇人だな」
嘘は吐いていない。船は爆発してしまったので、今はここが不動の家だ。
佐久間は、それに答えず不動の手を取る。悴んだ指には熱すぎる温度にたじろいだが、佐久間はお構いなしに不動の腕を引っ張った。
「何すんだよ!!」
「黙れ。めでたい時にお前みたいなKYが居ると気分湿気んだよ。いいから来いや」
「はぁ?意味わかんね…」
足を突っ張って動こうとしない不動に痺れを切らし、佐久間は怒鳴る。
「見てるこっちの気分が寒ぃから、あっためてやるっつってんだ!!」
暫し沈黙、やがて不愉快そうな顔で、しかし弾んだ声で言いながら、不動は佐久間の腕にしっかりとしがみついた。
「そこまで言うなら暖められてやるよ」
「調子乗んなよ、ハゲ」
「うっせーロン毛」
二度目の出会いも、ここから始まる。
END