頂き物、捧げ物

□71000キリリク(稲妻11)
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不理解不能


グラウンドの真ん中にイーゼルを立て絵画に興じているのは、この間佐久間と源田が連れてきた不思議なモヒカン頭の男。片手に持った食パンをモグモグしながら、いっちょ前に木炭でカンバスを擦っていた。

「…ほう、上手いじゃないか」
「よーぅ、鬼道ちゃ〜ん」

黒の濃淡で見事に描かれた、サッカーゴールとその後ろに見える扉。後ろから鬼道が覗き込んでいるのに気が付いた不動は、頭だけ振り返ってニヤと口元を歪めた。

「お前のことだからまた突飛な物を描いているのかと思ったが、大したものだな」

鬼道が素直な感想を口にすれば、不動は途端にぶすくれる。誉められれば喜ばない筈がない不動が気に食わないとすれば、その前の台詞だ。

「気に障ったか?すまないな、お前は不思議なことを仕出かすから、描くものも然りだと思ったんだ」
「例えば?」

質問と謝罪を一緒くたに述べると逆に問われ、鬼道は少し考えてから答える。

「カンバスを塗りつぶしているとか、グロテスクな絵を描いているとか…」
「あっは、まっさかぁ。しねぇよ、そんな愚行」
「そうか…」

再び笑顔に戻った不動に、鬼道もつられて苦笑した。
どうやらもう絵は終わりらしい。不動は少し黒ずんだ食パンをポイと口に放り込み鬼道に向き直った。

「絵は人に見せるもんだろ〜?だからオレは、不要な線は飲っくんじまってキレイでスバラシイ絵を描いてみせるンだ」
「…成る程な」

カンバスの角に手を添えて、不動は探るように鬼道を見る。

「スバラシイだろ?」

愉しげな言葉は、暗に意味を含んでいるのを悟られまいとしているのか、或いは全くの逆か。
指先で不動の顎を持ち上げ、息のかかる距離で鬼道は答えた。

「確かに素晴らしい。が、飲み込んでしまった物の方に、オレは興味があるな」
「ヒャッハ、鬼道ちゃんになら見してやってもいいぜ〜?」

横目で黒一色の風景画を見ながら、木炭臭い唇を貪る。
子供っぽい策に敢えてハマってやるのも、偶には良いかも知れない。


END
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