dream2
□ウブボーイ、
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ソファーからジローちゃんの寝息が聞こえる部室で、私は思っていた。
あいつの顔には何故!、目の下にしか、無いのかと。
何がって、黒子が。
「おかしい!」
「あーん?」
あたしの書いた今日の部誌を読みながら直しをしてくれている跡部があからさまに嫌な顔をしてこちらを向いた。
「何で跡部、左目の下にしか黒子がないの?」
「あ〜ん?何いってんだ?」
「いや、だってね、私のイメージじゃ跡部って彼女以外にも女いっぱいいるじゃん?」
「返事になってねーんだよ。つか知るかよんなイメージ、彼女すらいねぇーっつの。」
嫌な顔をするもののちゃんと相手にしてくれるから良い奴だとは思うけど、どうしても、負におちないんだ。
それは今日の部活中の事、ジローちゃんが教えてくれた黒子の豆知識。
『右っかわの鼻とほっぺの間の法令千が出るラインに黒子がある男は浮気症らしいよー。あっ、ちなみに女の子は左なんだってー。』
で、あたしは今日、レギュラー人のラインとゆうラインを見ていた。
当たり前のように忍足にはあった、
が、ショックな事に純粋だと思っていた宍戸にもあった。
でも、宍戸は確か前の彼女と別れた理由は今の彼女とうまくいっちゃったとかだった気がして納得した。
「てな、わけで、跡部に黒子が無いのはおかしいのよ!!」
「んなの名神だろ。いちいち信じて俺様を浮気者にしようとすんじゃねーよアホ。」
「えぇ〜でもでも、忍足にはちゃ〜んとあったんだよ?本当っぽいじゃーん。」
「……どっちにしろ黒子もないし、俺はもともと浮気症でもねぇんだよ。
つか、お前、んな事より漢字間違いすぎなんだよ!毎回直す俺様の身にもなりやがれ。」
どうやら跡部ですら忍足へのフォローはできなかったらしく、また部誌に目を通しながら漢字を直していく。
「でもやっぱ納得できなーい。」
「まだ言ってんのかよ。」
今度は呆れたのか、顔をあげないまま返事を返された。
つまらないから私は机に突っ伏しながら話を進めた。
「だってね、跡部は格好いいし、頭いいし、スポーツ万能でしょ?しかも、私のでたらめな部誌いっつも直してくれるし、つまらない話にもちゃんと嫌々ながら相手してくれる優しい人だし、何だかんだ言いながらちゃんと部員の事考えて助けてあげられる器のでかーい人間だし、実は情が熱いし、むちゃくちゃいい奴じゃない?ぶっちゃけ男としてかなり格好いいから、すっごくモテると思うわけですよ。私は。なのに彼女もいないし黒子もないなんて可笑しいよ。」
「………。」
言い終えて跡部の『あたりまえだ』とか『今頃俺様の良さに気づいたのか?アーン?』とかそうゆう返事をしばらく待ったが、まったく返事をしてくれない跡部。
机に顔を乗せたままチロッと見ると、顔を隠すように手を顔にあてていた。
顔は見えないが整えられた綺麗な髪の毛からチラッと見える耳が真っ赤になっている。
「え、何で耳真っ赤にしてんの?もしかして照れた?ねー、ねー、跡部、照れてるの〜?」
跡部に顔を覗きこむように寄って肩に手を置いた。
「うるせーアホ女!!だまりやがれ!!」
私の手を払いのけて顔をあげた跡部は見た事もないぐらい顔も真っ赤にしていた。
ウブボーイ。
「ずーっと一途に想い続けてきた子にそんなにべた褒めされたら嬉しいもんだシー。ねー跡部?」
「ジロー!!てめぇは寝てろ!!」
黒子の話が本当でありますようにと祈りながら私も顔を赤くした。
090404