今日、中学の時に初めて付き合った子を街で見かけた。
昔とは違い大人になった彼女を見て惜しいことをしたなどと身勝手な事を思った。
彼女を傷つけたのは自分なのに。
確かに恋だった
俺が初めて付き合ったその子はツヤツヤしてるって言うのかな？
頭のてっぺんから足の先までが整ったキレイな、本当に女の子らしい子だった。
付き合い出したきっかけは彼女の告白。
彼女の事は知っていたけれど、話した記憶なんてなかったからとりあえず友達から始めた。
とりあえず友達から始めたって、なんだか最終的には付き合わなければいけない言い方な気がして可笑しいと思ったんだけれど、正直、そういった色恋に興味がないわけではなかった俺が毎日は合わないもののメールのやりとりをしていくうちに彼女に引かれるのに時間はかからなかった。
けれど心のどこかで、この気持ちはたまたま今、メールしている女の子がこの子で、その子が俺を好きだから、僕は浮かれてるだけで、この気持ちはただの勘違いなのかもしれないと思っていた。
「俺は付き合ってみるんも悪くないと思うけどの〜。別にダメだったらダメだったでまだ俺ら若いんじゃし、固く考えんでいいんじゃなか？」
「もう、半年以上もメールは毎日してんだろぃ？早く付き合っちまえよぃ。」
当時、俺は別段仁王や丸井と部活意外でつるんでいた訳ではないが、なぜ仁王と丸井にこの事を相談したのかと言うと、きっと俺は誰かに、背中を押して貰いたかったからだと思う。
柳だと、先の事を読まれ、止めはしないにしろ、自分で選べばいいと言われ、真田だと女の子の名前を出しただけでも、渇を入れられそうだと、思っていた。
つまりは、どこかで女の子と付き合ってみたいと言う思いがあったのだが、皆と違う事をして拒絶されるのが怖かったのだ。
何て意志の弱い人間なんだろう。
自分で自分が情けない。
そして、いくじなしの俺は彼女と付き合いだした。
付き合うって何なのか解らない俺は何度か仁王に相談をした。
彼が一番経験豊富だと思ったから。
そのたびに仁王に
「幸村でも独りで解決できんことがあるんじゃな〜。」
と笑われたのを覚えている。
俺は真剣に相談しているのだけど彼女の事で悩む事をどこかで楽しいと思っていたから、笑われても不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
けれど、いつの間にかそれも面倒になってきていた。
『幸村君は私の事すき？』
だからだろうか、前なら自然と『好きだ』と返せていたが、面倒だと自分の気持ちに気がついた時から自分の『好きだ』に違和感を覚えるようになったのは。
そのうち彼女のその問いに彼女が安心してこの関係が長続きするならと義務的に『好きだ』と言うようになっていた。
慣れって怖いもので、義務的なその答えにどんどん違和感なんてなくなっていた。
彼女と別れた日、俺はいつものように『好きだ』を彼女に返した。
いつもなら、それで彼女があいづちをうって終わりなのに、その日は彼女の泣き声が聞こえてきた。
彼女をみると
『精市は私を好きなんじゃない。女の子が好きなんだよ。』
と、怒っているような、悲しんでいるような悲痛な顔をしてそう言わた。
つき合う前に彼女への気持ちは勘違いかもしれないと思っていた事をおもいだした俺は確かにそうなのかもしれないと思い、そのあと否定も肯定もせず、ただ泣いている彼女をずっと見ていた。
もしかしたら、ずっと悲痛な顔をさしていたのかもしれないが変な安心感をもっていた俺には気がついてあげる事は出来なかった。
今なら大切にできる自信があるのだけれど、それはきっと彼女と出会って学んだ事だから彼女と今なんて無いだろう。
本当に身勝手な図々しい事だろうし。
でもせめて彼女が今、あの時よりさらに綺麗になっているのは俺と恋をして、強くなったからだと、想わせて欲しい。
どうか、幸せに。
