SS
□栗色
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目の前で揺れる栗色の一房に手を伸ばす。
野宿が多いわりにはサラサラしていつも手入れが行き届いている
「なによ?」
怪訝そうに振り向く彼女
「いやぁ目の前でゆらゆらしてたからなんとなく」
「あんたは猫かっ!?」
悪態を吐(つ)きながら歩みを進める
この栗色の一筋も傷つけたくない…そう思うのは自分のエゴだろうか
何があっても守り通したい。例えこの命と引き換えであっても
「俺、重症だな」
ポツリと呟き少し離れた栗色の髪の持ち主を見る
「ちょっと〜早くしてよ〜!あたし今日は野宿ヤだかんね!」
「悪い悪い」
駆け寄り頭に手を乗せる
「もぅ!子供扱いしないでったら!」
こんな文句すら可愛らしくて思わず頬が緩む
俺はもう君なしじゃ生きられない。