黄泉桜(M&W:仕事してP)
闇から姿を見せた朧月。その淡い光が、君と彼を照らしている。君は彼の腕の中で、静かに眠っていた。
翌朝。私の周囲が悲しみに満ちている。昨夜の君は、ただ眠っていた訳ではなかったんだね。もう目覚めることのない、永遠の眠りだったんだね。
これは君を失った彼の悲しみ。そして、彼と別れなければならない、君の悲しみ。
君と彼の悲しみが、少しは和らぐようにと、私自身を散らせよう。
君がこの世に縛られないように。
彼が君に縛られないように。
君との思い出は、私にもたくさんあったよ。幼い君が、私によじ登って枝を折って落っこちたり。私の元で昼寝をしたり。彼と一緒にお花見もしてたね。悩みがあるときは打ち明けてくれたし、楽しい話もたくさんしてくれた。多くの時間を、君は私と過ごしてくれた。
そんな君との別れは、私にとっても辛いこと。でも、私は嘆くことは出来ないから、涙の代わりに私自身を散らせるよ。
君の旅路の道標となるように。
彼の代わりにはなれないかもしれないけど、最後の最後まで、君と一緒に居られるように。
――私はずっと、ここにいるから。
姿が変わっても、また逢いに来てね。