夢幻の関わりがあったから俺は、無限のよろこびを知った。

□第四章∞禁じられた遊び
1ページ/15ページ

第四章禁じられた遊び


* * プロローグ * *


「久維くんは幽霊とか信じる?」

 いつもと同じ天気のいい朝。自分の席にカバンを置き、机に伏せてまどろむ。睡魔のお迎えが来た辺りでクラスメイトの女子二人が俺の後頭部に向かって声をかける。

「ゆーれい?」

 突然の話題に思考が付いて行かず問い返す。のっそりと顔を上げて二人の女の子の答えを待った。

「うん。あたしのいとこが通ってる高校で霊が出るって騒ぎになってて……ほら、最近新聞とかでも取り上げられてるでしょ? 緑稜高校」

 視線を何度か彷徨わせて記憶を辿るが、特にヒットするような事柄はなかった。それもそうだ。だって俺、新聞取ってないし、ウチにテレビなんかない。ニュースなんかネットでチェックするくらいだから、そんなもの必要ない。それに、ネットで大きく取り上げられていたとしても、目を通さない自信はある。

「……ごめん、知らないや」

 女の子は俺の答えに少しだけ驚いた表情を見せる。

「そっか。そのいとこが通ってる緑稜高校には最近変なことが多いんだって。久維くんはどう思う? やっぱり霊の仕業だと思う?」

 何故その手の話を俺に振ってきたかはわからないが、俺は率直な意見を返す。

「霊を信じるか信じないかで言えば、俺は前者。その学校と霊が関連してる、とは言い難いけど、可能性の一つではあるんじゃない?」

「久維くんは肯定的なんだね。男子はほとんど否定的なんだよ。ね、侑士?」

 丁度登校してきた侑士に女の子が問う。侑士は気前よく笑顔を向けて答えた。

「俺としてはおってもおらんでもどっちでもいーけど……とりあえず自分が見てみな信じられへんなぁ。跡部はどうなん?」

「興味ねぇ」

 景吾は読んでいる本から視線を外さずに一言。こういう所、ナルちゃんに似てるなぁ、なんて思う。

「俺の友達が、そういうこと科学的に研究しててね。手伝いに狩りだされてそれっぽい経験をしてるから信じざるを得ないっつーか……」

「久維くんって霊能力あるの!?」

「除霊とかやっちゃう訳!?」

 俺の言葉に女の子二人は目を輝かせた。

「ないない。そっちは皆無。俺の仕事は書類整理。データをまとめる、そんなシゴト」

「なぁんだ……」

 と少し残念そうに呟いた時、ホームルーム開始を告げるチャイムが鳴り、女の子たちは不満げな顔のまま席へと戻った。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ