作家アリスシリーズ

□おはよう。
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 寝室に“It’s a small world”が鳴り響く。かなりチープなやつだ。時計を確認して思わず舌打ちしてしまう。ベッドに入ってまだ一時間も経っていない。



「……もしもし?」



 意図せず声がとがる。まぁ、眠いのだから仕方ない。



 ――あ、やっぱ寝てた? 俺、誰かわかる?



 想定通りの相手だった。



「アリス」



 正解、と嬉しそうな声。この程度で喜ばれるのは複雑だ。ただ単に、アリスの着信には“It’s a small world”を使っていただけなのだから。



 それにしても。寝ているだろうと予測した相手に連絡をしてきたのか? 何か緊急の要件でもあるのだろうか。そのまま問う。



 ――寝起きな割には察しがええやん。



 意外そうに目を丸くし、でも、優しい笑みを浮かべるアリスの顔が容易に想像出来る。



 ――さっき火村から電話あってな。ウチの近所の動物園までご出張やねんて。んで俺も誘われたから行くねんけど、咲はどうする?



 眠気で靄がかかっていた意識が一気に覚醒した。



「何でヒデじゃなくアリスからの誘いなんかわからんけど……つまりアレやろ? 動物園デート。行く行く絶対行く全力で行く!」



 お互いの都合でヒデやアリスと一週間ほど会えていない。事件現場に足を踏み入れるということから、不謹慎なのは承知だが、二人に会えるのは素直に嬉しい。



 ――ええお返事や。まぁ、デートは事件が片付いたらになるけどな。



 まぁ、それは仕方ない。さっさと片付けてもらって、少しでも長いデートを期待するとしよう。



 ――んなら、準備してウチ来ぃ。火村もウチに車置きに来るって言うてたし。……それか迎えに行こか?



「いや、大丈夫。一人で行ける」



 相変わらず過保護やなぁと思う。でも全然嫌じゃない。



「なぁ、アリス」



 ――ん?



「おはよう。……まだ言うてなかったやろ?」



 ――っっ!



 俺の言葉に、促音全開の反応。多分今、アリスの顔は真っ赤なんだろう。スキを付けたようで嬉しい。



「シャワー浴びたらすぐ行くわ。お出迎えよろしく」



 ――あ、あぁ。気ぃ付けてな。



 途中でマクド寄って朝マックでも買っていこう。

 そんなことを考えながら、支度に取り掛かった。



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