□straight tea
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雲ひとつない秋晴れの空
窓をはさんで差し込む光はぽかぽかとして心地よい
黒板にチョークが当たる音と遠くに聞こえるざわめき以外は全くの静寂
黒板の斜めうえにある丸い時計は調度2時を指していた

あと20分もある

回りはみな顔をあげたりさげたりしてノートを写していた
けどこんな午後にはなんとなくやる気がでない

そう
こんな午後には薔薇の館で優雅に午後の紅茶でも飲むのがあっている

そんな事を思っている日に限って会議がなかったりするのだけど

どうせ授業など聞いていないし
次の授業は薔薇の館でさぼってしまおうか
会議がないからばれる事もない

なんとなく出た提案は
なかなかいいものだった


そう決めてしまうと
さらに授業を受けるのがめんどくさくなって
ふと校庭を見る

スポーツの秋にふさわしく陸上をやっていた
結構寒くなってきたが
まだ紅いふちの白いTシャツを着た子が目立つ

一日の中で一番暑いのは2時ぐらいらしいけど秋はこの時間帯が調度いい

遠くから見えるこの風景はすごく穏やかだ

まぁ実際にその場にいけばいろいろ大変なのだけど

立てられた二つのポールにおかれた一本の棒

そういえばこの前記録を取ったのを思い出す
たしか160センチぐらいだったはずだ
すごく驚かれてたっけ
頑張れば全国ねらえるとかなんとか
なにか競技をやるたびにそんなような事を言われるのでもう慣れてしまった

そんな取り留めのないことをぼけーと考えながらぼんやりとみていると
列の中からよく見知った顔を見つける

スラっとのびた白い手足とは対象的なボブカットの黒い髪

視力が2.0なくてもきっとすぐにわかる

列の三番目
後ろには一人
回りにはたくさんの人が囲んでいた

基本,記録をはかる場所は4ヵ所ある

60〜80
80〜100
100〜120p
とそれ以上

だけどほとんどの人が一カ所に集まっている
たぶん飛ぶためでなくみるために
今飛んでいるのは135pぐらいだろう
少しぼやけているけどそんなにはずれてはいないはずだ

ピッと笛がなり一人目が飛ぶ


…失敗。

助走でタイミングがあわなかったのだろう
飛ばずに通り過ぎてしまった

まぁ助走があったとしてもこの高さをハサミ飛びで飛ぶのは厳しい

二人目もやっぱりハサミ飛びで失敗
運動神経がいくらよくてもハサミ飛ぶじゃ130が限界だろう
本業の人を除けば


さぁ
いよいよ我らが紅薔薇様

表情はいつもと変わらず凛としている

走る体制にはいる

ピッと笛がなった



ちょっと長めの助走

こを描くように走り棒に対して体が横になるようにする

一瞬沈む体

ふわりと舞う漆黒の髪からのぞく顔はいつも通りのポーカーフェイス

上げた右足は優に棒の高さを越え
それに左足が続いた


棒の10pほど上の大ジャンプ

張り詰められた緊張感が一瞬で解かれた


ここからでも聞こえる歓声に笑顔で答えている
でもその笑顔の下で少しやりずらそうにしているのはたぶん私しか知らない

次の子が飛ぶ準備に入る
スパイクをはいているところをみると陸上部なのだろう
慣れた動きからもわかる

2,3回跳ねてから走り出す


調度飛ぼうというときに

チャイムがなった


 
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