□TOXIC
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暇なときや退屈な時に浮かぶのはいつもあの人の顔
考えないようにすればするほど鮮明に浮かぶ

お願いだから

もうわたしの心に居座らないでちょうだい

もう私に無理をさせないでちょうだい


−−−TOXIC−−−

「それでは今日のところはこれで」

受験が迫まってきた秋の下旬
文化祭という一大事行事も終わり薔薇様としてのおおきな仕事は終わった
あとは卒業式ぐらいだがそれも私たちが薔薇様としては直接関わることはないだろう

「みんな山百合会の幹部としての自覚を持って行動するように」

帰っていく妹たちにそういう蓉子
きっとそれまで蓉子は気を抜かない
もっとも蓉子なら卒業したあともいろいろと世話を焼きそうだけど

「相変わらずお堅いわね」

そういってひらひらと手をゆらす聖
あの言葉はほとんど聖に向けられたものだというのにそれに気がつきつつそう言う

「ちゃちゃを入れないでちょうだい」

まるで夫婦みたいな会話

そう思って苦笑する
夫婦みたいだという事にではなく胸が締め付けられた自分に

「あなた達って夫婦みたいね」

だからそういったのはこの状況をおもしろいものに変えるため

「なっ!?」

「あっやっぱり?」

嬉しそうな顔をしている聖となにいっているのよと真っ赤に照れながら怒っている蓉子

あぁ
よかった

予想どおりの反応


「もっもう
私は帰るからね!!」

でもなぜだろう

「えー
一緒に帰ろうよ」

いつもなら楽しくてしょうがない状況なのに

「知らない!!」

なんでこんなに苦しいのだろう

すごい勢いで蓉子はかばんとコートをとり駆け出していった
バタンと閉められたドアをみて帰っちゃったと苦笑いして椅子に座る聖
すぐ照れちゃってかわいいんだからと言ってすっかり冷めたティーカップに口をつける

「あ」

「ん?なに?」

首を傾げて私を見る

「そのティーカップ…」

聖が座っていたのは蓉子の席
…でも

「あっ
これ蓉子のだ」

間接キスじゃんとまたカップにちゅっちゅっと嬉しそうにくちづける



「…最低」

ぐはっと聖は胸のあたりを押さえる

そしてそのもう片方の右手に持っているのはさっきまでわたしが使っていたジャスミンティーが入ったティーカップ

「それは結構くるなぁ」

「あら
私はてっきらこんなこといろんな女の子からいい慣れているのかと思ったわ」

あははと苦笑いして頭をかく聖

…なんでそんな反応するのよ

「さて」

ティーカップと頭をかいてた手をおき立ち上がるそのへらっとした表情と立ち直りの早さから
さっきのことが本当だとうらづけわれる

「江利子も一緒に帰る?」



「…私はいいわ」


 
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