■オレとお前で歩く道■
□第6話『前へ進め!!』
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気がつけば夏休みが目の前に来ていた。
今年は一応受験生のオレ達のクラスでは、担任との一対一の進路相談なんかも始まって、未だに進路に迷ってるオレは、毎日のように学部案内パンフレットとにらめっこしてる日々を送っていたりする。
担任と一対一の進路相談……っつっても、オレの担任はオレを良く知るロイだから、オレがまだ進路を決めかねている事なんてとっくにお見通しで、進路相談と言うよりは、家族会議のような曖昧なものになってしまった。
夏休み直前ともなれば、殆どの人間が進路を決めているという話を聞いて、オレはいい加減自分の進路を決めてしまいたいと、うんざりした。
「って訳だから、今度の日曜付き合って」
進路相談では、自分の進みたい進路に太鼓判を押されたラッセルに向かって、オレは仁王立ちで言い放った。
今度の日曜、大学の別館がオープンキャンパスを開くんだそうだ。
ここにある本館なら、わざわざオープンキャンパスを見に行く必要なんてないけど、別館は一度も足を踏み入れた事のない未知なる場所だ。
まだ別館に通うと決めた訳じゃないにしろ、一度くらいは見ておいても損はないだろう。
現在オレは、自分の進路が全く決まらない状況にある。少しでも多くの学部を見て、興味をそそられるものを見つけなきゃまずいんだ。
オレには何かと甘いロイも、流石に
『夏休み明けには決めておきなさい』
と、少し呆れた顔で言っていた。
「別にいいけど……」
ラッセルはすんなり承諾してくれたけど、自分が誘われたのは少し意外だという顔をした。
多分オレの事だから、アルを誘って行くんだろうと思っただろう。
オレも最初はそうしようと思ってた。
だけど、丁度その日はアルの都合が悪かった。
ブラッドレイ宅のホントの息子であり、アルの仮の弟であるセリムの発表会があるんだそうだ。ピアノの……。
(ピアノって……)
それを聞いた時には脱帽した。
そう言えば、ブラッドレイ宅のだだっ広いリビングには、立派なグランドピアノが置いてあったっけ?てっきり奥さんの趣味かと思ってたけど……。
そんな訳で、一人で行くのも何だから、ラッセルを誘おうって事になったんだ。
オレ一人じゃ迷子になる可能性もあるし……。