■オレとお前で歩く道■

□第9話『秋の祭典☆学園祭』
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 机の上に投げ出しっぱなしにしていた携帯のバイブ音が鳴り出した。

「ん?」

 オレは今し方口に放り込んだばかりの飴を舌の上で転がしながら、極々自然な動きで携帯に手を伸ばす。
 二つ折りの携帯を開き、受信メールを確認。差出人の名前は最近頻繁に目にする名前。他人とは思えないくらい愛着のある、オレと同じ名前だった。

「あ、エドワードからだ」

 オレは嬉々とした声を上げると、机を挟んで真向かいに座っているラッセルに遠慮する事なく、届いたばかりのメール内容をチェック。
 そんなオレの姿にラッセルは呆れた溜め息を一つ零すと、机の上に広げられた数枚のプリントを指先で摘み、面倒臭そうに目を走らせた。
 その内の一枚には【学園祭 模擬店運営規約】という、他の字とは太さも大きさも倍角された活字が印刷されていた。
 十月の第四週を丸々修学旅行に費やしたばかりだっていうのに、その翌週にはもう学園祭の準備。十月に入ってから体育祭、中間テスト、修学旅行と立て続けに学校行事が続き、十一月に入ったら今度は学園祭かよ。とても高校三年生の二学期とは思えない。
 普通、高校三年生のこの時期と言えば受験一色。こんなイベントばかり立て続けに開催されたんじゃ、保護者から苦情の一つや二つあってもおかしくない。
 が、生徒の内の誰一人として、そんな事で気に病んでる様子が無いと同様に、こんなお祭り騒ぎを立て続けに行ってしまうこの学園の方針というやつに、文句をつける親もいない。
 ま、小学校……あっても中学校くらいまでなら、学校行事の中に“授業参観”というものも含まれる。そういうものが無くなる高校では、学園祭がある種授業参観代わりになるのかもしれない。クラスの連中に話を聞いてみれば、親は親で学園祭に行ける事を楽しみにしてるんだとか。
 なるほど、金持ちってのは呑気でのんびり屋さんが多いらしい。

「お前……いつの間にあのガキと仲良しこよしになってるんだ?」

 読み終わったメールにいそいそと返事を打ち返すオレに冷ややかな視線を向けながら、ラッセルは少し面白くなさそうに聞いてくる。
 うーん……これは所謂“ヤキモチ”ってやつなんだろうか……。
 高校二年の半ばから、親友としての付き合いをしてきたラッセルに、修学旅行旅行中いきなり告白された事件はまだ記憶に新しい。
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