■オレとお前で歩く道■

□第12話『新しい旅立ち』
1ページ/98ページ

 


□■□



 二月も下旬に差し掛かると、オレ達三年生はいよいよ卒業に向けてまっしぐら……といった感じだった。
 進路もすっかり決まってしまい、後は卒業式を残すばかりとなった教室内は、勉強にもあまり身が入っていないと言うか……。残り少ない高校生活を、勉強よりも思い出作りに費やしたい連中が増えてくる。何を隠そう、オレもその一人である。
 他の連中よりも本試験が遅かったオレも、先週末には試験結果がきた。正直自信はなかったものの、結果は合格。オレの大学別館への道は、確定となったわけだ。
 同日、オレと同じ学部を受けたハイデリヒからも、合格報告メールが届いた。
 これまで偶然的にしか会う事がなかったハイデリヒとも、春からは同じ大学、同じ学部に通う事になる。
 全く知らない連中の中に、一人飛び込んで行く事になるだろうと思っていたオレには、ちょっとだけ心強い存在になりそうだ。
 大学で顔を合わせるようになったら、歳の離れた友人エドワードの事を、ハイデリヒに猛プッシュしてやろうと思っている。
 そんなこんなで放課後である。
 三月の頭に卒業式を迎えるオレ達にとって、放課後という響き自体、もうすぐ過去のものとなってしまうんだろうなぁ。
 思えば、この学校に転校してきてからというもの、放課後は特別な時間だった。この学校におけるオレの放課後とは、事件続きだった気がする。
 何も放課後だけが事件勃発の時間ではなかったけど、放課後から始まる大事件、災難なんかも、決して少なくはなかったと思う。
 オレがアルに初めて手を出されたのも、放課後だったもんなぁ……。
 その色々と思い出のある、感慨深い放課後を教室で過ごすオレは、お馴染みのメンバー、アル、ラッセル、ロゼ、フレッチャーに囲まれ……。

「何か……今更すぎて逆に落ち着かないな」
「確かに。見てるこっちも変な気分だ」

 本来あるべき姿、男子高校生姿を披露していた。
 制服はオレとあまり体格差のないフレッチャーから借りている。本試験を受けに行った時とは違って、上から下までちゃんとした男子用の制服。それも冬用だ。
 オレに制服を貸しているフレッチャーは今、上下体操服姿になって、男子用の制服に身を包んだオレを、にこにこしながら眺めている。
 教室にはオレ達以外の誰もいない。みんながいなくなったのを確認してから、こういう事になったのだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ