■オレとお前で歩く道■

□第11話『ホワイト・バレンタイン』
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 三学期が始まった。
 高校最後の最終学期を迎えたオレ達三年生にとって、この三学期っていうのは大学に進む為の受験本番という大事な学期であり、また、卒業を迎えるちょっと切ない学期でもあった。
 ま、受験本番っつっても、うちの学校は大学付属だからな。一般的な大学受験を控えた受験生に比べれば随分と平和で、のんびりとした三学期なのかもしれない。
 前にも話したけど、オレ達が受けるのは入試ではなく進学試験。それも、絶望的な不合格のない、やり直しも一回利いてしまう進学試験だ。
 正直、緊張感なんて生まれるはずがない。こんな恵まれた環境で緊張したり神経をすり減らせていたりしたら、世の受験生様に失礼だって話。
 そりゃまあ、高学歴を必要とされる学部はあるし、そういう学部に関して言うなら、合格の難度も上がると聞くが、元々うちの学校に通っている奴らは成績がいい。成績がいいうえ、生まれた時から将来が決まってる奴らが多いから、これまでの人生がそうなるように形成されている。
 言ってみれば、家業を継ぐお坊ちゃん、お嬢様が多いのだ。
 中にはそうじゃない人間もいるようだが、公立校に比べて授業料が高い、高すぎるらしいこの学校に通っている時点で、裕福な暮らしを送っている事になり、そういう家の子ってのは、総じて上品で優秀に育つもののようだから、目に見えていう落ちこぼれはいない。そんな存在は、現在理事長子息扱いを受けているアルの身内で、知らない間に授業料の三分の二をカット(これでようやく公立並の授業料になるらしい)してもらってるオレぐらいだったが、そのオレも、三年次からは徐々に成績が上がり始め、今じゃ平均をちょっと上回るほどになってたりする。
 自慢じゃないが、オレは元から成績が悪い人間じゃなかったし、やればやっただけ出来るようになるのが勉強ってもんだ。オレの場合、やるのが面倒臭かっただけ。
 加えて言わせてもらうなら、この学校に来てしばらくの間、オレが落ちこぼれとして悪成績しか上げられなかったのは、単純にこの学校の高度な授業内容について行けず、あたふたしていたからだ。
 それまでオレが通っていた公立高校は、レベルの低い学校ってわけじゃなかったけど、授業内容は教科書に忠実。勉強は必要最低限、基本ができてればそれでいいって感じだったからな。
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