■オレとお前で歩く道■
□第2話『子供の事情。大人の事情』
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そんな時は決まって
「兄さんっ!!もういい加減そんな恥ずかしい事やめてよっ!!アル君もエディーさんも迷惑だよっ!!」
兄貴とは正反対の性格で体格も小柄で貧弱そうな弟フレッチャーがやって来て、オレ達の前から何とかラッセルを引っ張って行こうと頑張ってくれるのだ。
「えぇぃっ!!邪魔するなっ!!フレッチャーっ!!」
「邪魔してるのは兄さんだよぉっ!!」
うちもそうだけど……最近の兄弟ってのは弟の方が兄貴に手を焼くようになってるんだろうか。この二人見てたら自分達の姿を重ねずにはいられなかったりする。
「エディー姉さんはモテモテだね!!やっぱりそれだけ綺麗だとみんな彼女にしたいって思うんだね!!」
「ははは……」
たかが10歳になったばっかのガキんちょが何を言う……。確かセリムにはオレの素性を明かしたはずなんだけど?どうやらあんま理解してない様子だ。
学校ではオレが男である事は言わないようにと口止めはしたけど、男のオレがこんな格好をしているとホントに男だと信じられないんだろうか。
「エディー。途中まで一緒に帰ろ?」
「うん」
「僕も」
「……うん」
「あっ!!ちょっと待てっ!!エディーっ!!」
「もうっ!!兄さんっ!!」
こうしてオレにつきまとう奴が増える程、オレはアルと二人っきりで過ごす時間がどんどん失われていく。
おまけにロイを好きだと自ら暴露したハボック先生にも、ロイの事であれこれ聞いてこられるし、一度……しかもほんの数分だけロイと話したロゼまでもロイの事を知りたがるしで大変なんだよ……。
オレの高校生活はもっと静かで平和にアルと過ごせるものだったはずなのに。全てはオレがこの学校では性別“女”として生活してるからこんな変な事になっちまったんだ。
いっそのこと変態だと思われてもいいから自分の正体明かした方がどんだけ楽かとも思ったけど……。アルとの付き合いが公になってしまった以上、オレの正体がバレるとアルにも火の粉が降りかかっちまう。
アルがこの学園の理事長の息子だって事はみんなが知ってるみたいだし、そのおかげでオレの授業料も半分以上免除になってんだ。アルのイメージダウンになるような事をオレから招く訳にはいかねーよなぁ……。
とにかく、今では唯一昼休みだけがアルと慎ましく過ごせる貴重な時間になっている。