崩落編

□外伝 1
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雲ひとつない晴れ晴れしい空が太陽とともに街を見下ろす。


輝く街はまさに光の王都という呼び名に相応しい。
朝早い中賑わい活気に溢れる街を恨めしそうに見下ろす幼き姫様がいた。
城のテラスから眺める姫様は可愛いらしい顔を歪ませ先程から引っ切りなしに文句を言う。



「何故私も外に出てはいけないのです? もう13歳を迎えたのですから、外出したって良ろしいじゃありませんのっ」


近くにいた姥はまたいつもの言葉に苦笑し、


「仕方ありませんよ、婚約者であるアッシュ様が3年前に誘拐されたのです。姫様にも警戒の眼を向けるのは当然の事なのでしょう」


「だとしてもっ、もう3年ですのよ?! もういい加減自由にさせてほしいですわ」


「まあまあ、それだけ国王様も心配しておられるのでしょう」


いつものやり取りと台詞に姫様は更に顔を膨らませて


「う〜〜っ、私そのうちグレますわっ」


そう癇癪を起こすが、姥は手慣れたようにまた笑って


「姫様の反抗とはきっと可愛いらしいものでしょうね」


と軽くかわしお世話に一段落ついたのか、そのまま一礼をして部屋を出ていった。
姫様は未だふに落ちないようで顔を真っ赤にしながら


「……絶対一泡吹かせますわ、お父様も婆やもっ!」









「フフフ……完璧ですわ、」


そう言って手にするのはカーテンやシーツの端をきつく縛り、それを何枚も繋げ合わせたモノ。
長さはテラスから下ろしても、余裕で地面に着く程だろう。

姫様はそれを片手にテラスに向かい下に誰も居ないかを確認し、慎重に投げ落とす。

それから静かに下に降りると、メイド達がよく使う勝手口へ向かった。

当然そこにも警備兵はいる。
しかし兵士が1人だけだということに、姫様はにんまりと悪どい笑みを浮かべると地面にある小石を拾いあげた。

そしてそれを自分とは正反対に力の限り投げ付ける。 その音に兵士が気を取られている隙に門をスルリと抜け出した。

小走りに未だ気付かない兵士を見ながら、姫様は高鳴る胸を抑え外の世界へと駆け出して行った。






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