◇御題小説

□ひだまり
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どかん。

寝そべっている大地が震え、同時に爆発音が聞こえた。
それまで休憩していた鳥たちは皆同じ方向へ飛び立ち、蝉がぴたりと鳴き止む。

ああ、ついにやったんだね。僕とキンちゃんが寝ずに一ヵ月かけて完成させた、大型破壊兵器。
持久戦となる今回の戦争でのシンちゃんの体を気遣って開発したのだけど、いいデータがとれれば次回からは改良を加えて前線に出すってキンちゃんが言ってた。

もしかして彼は、まだシンちゃんを憎んでいるのかな。
二十四年間の恨みを、これからじっくりと晴らそうとしているのかな。

だって、キンちゃんはシンちゃんのことちっとも分かってないんだもん。
シンちゃんが望むのは、多少の危険が付きまとう無血開城。
キンちゃんが理想とするのは、損傷のない完璧な勝利。
目的と手段がすれ違う二人は、まるでマジックお父様とルーザー叔父様だね。

再び蝉が鳴きだした。羽根を震わせて、ひたすらに鳴いている。

あれは彼らへの鎮魂曲《レクイエム》。
命を散らした敗戦国の人々と、
分かり合えない二人の男に対する、
儚い命への歌。

END
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