◇御題小説

□ゼリービーンズ
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「キンちゃんはどの色がいい?」

グンマの美しさとゼリービーンズの輝きはこの研究室には不釣り合いだ。グンマには丸みを帯びた家具や放り出された人形がよく似合う。
まるで笑顔しか知らない幼い子供のように。

俺は差し出されたボックスから、選ばずに一粒摘み取る。
白だ。
それを見て、従兄弟は口元を意地悪げに歪ませた…つもりだろうが、俺には人々を誘惑する妖艶な笑みにしか見えない。

「それはプラチナ。辛ーいハッカ味だよ」

言いながらグンマは朱色を一粒口に放った。

なるほど。グンマは甘党だから、このハッカ味は天敵らしい。
俺は噛み締めるようにゆっくりと味わう。
これがアイツの排除したい味なのだと、舌に刻み付けながら。

「お前の持ってくる菓子にしては、甘くないほうだな」
「キンちゃんったら、無理しないでいいよ」

何について無理するというのか。
アイツにとって理解できないほどに辛い味を、俺がやせ我慢して食べていると思っているのか。
それとも度の過ぎた甘党のアイツに話を合わせていると勘違いされたのだろうか。

俺は判断し兼ねたまま、もう一粒口に入れる。
何色だったかは分からないが、グンマは見守るような瞳で俺を見つめていた。
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