◇小説

□甘いもの
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「トリックオアトリート!」

灰色の廊下なんてつまらない。
赤白黄に青緑。黒も混ぜた紙吹雪でカラフルに装飾!
ほうら、楽しーいパレードコース!

「みんな、トリックオアトリート!お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ〜!」

鼓笛隊よろしく高らかに宣告すれば、返ってくる疑問の眼差し。
そんな顔したって駄目。無駄。隊員はみんな僕に従わざるを得ないの。

「トリックオアトリート!」

ねぇ、聞こえるでしょう?この声が。

「お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ!」
「…お菓子をくれないと解剖しますよ〜」

ね、聞こえた?

慌てて僕にお菓子を貢ぐ団員たち。
その視線は、僕の背後の高松にロックオン。

僕は全く気付かないフリして、ありがとうって手を振るの。

「トリックオアトリート!」

「やぁグンマ!チョコならあるよ。これでいい?」
「ありがとうジャンさん」
「お前は一体いくつなんだ。飴でいいならあげるけどね」
「ありがとうサービス叔父様」

小さいお菓子でいいよ。寧ろ大きいお菓子は邪魔なだけ。
それは、お誕生日に頂戴?

「お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ!」

僕の悪戯でも高松の悪戯でも、好きなほうを選ばせてあげる。
どちらも救われないけどね。

「グンちゃん。私からはファンクラブ限定、マジック型ペロペロキャンディーをあげよう!」
「NO thank you.そんなもの受け取ったら、シンちゃんに近寄れないよ」

ばいばいって手を振れば、がっくりと肩を落とすお父様。
秘書たちはいないようだ。
残念。
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